VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#008 『劫の目』(坂本昌一郎/11eyes -罪と罰と贖いの少女-/PC)

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Lassがおくる侵蝕世界学園伝綺AVG11eyesより、

坂本昌一郎作曲、『劫の目』(劫の読みは「アイオン」)。

バトルがおこなわれるイベントシーンで、優勢(ほぼ勝利確定)時に流れる。

美少女ゲームブランド・Lassの4作目の作品として登場した本作。物語開始数年前に最愛の姉が自殺し、以後自堕落な高校生活を送っていた主人公・皐月駆は、何の前触れもなく幼馴染・水瀬ゆかとともに赤い夜という不可思議な異世界に誘われ、なぜか命を狙われることになる。同じく赤い夜に引き込まれた異能持ちの少年少女たちと協力しつつ、日常と赤い夜を行き来し、ほのぼのとした学園生活と絶体絶命のサバイバルの両方で仲間たちと親交を深めていく。明暗のコントラストが印象的な仕上がりとなっている。後に同一世界線での追加シナリオを搭載したXbox360PSP用の移植版が登場した。

本作の音楽を担当するのは坂本昌一郎氏。追加シナリオの作曲は坂本氏のみならず細江慎治氏も手がけている。坂本氏は当時、細江氏は今でも音楽制作会社スーパースィープに在籍している作曲家である。日常パートと赤い夜パートでがらりと雰囲気が変わることを受けて、前者は明るく朗らかな、後者は中世の暗黒時代を彷彿させるような怪奇的でゴシックテイストなサウンドが揃っている。サウンドトラックは原作の楽曲のみを収録したものに加え、移植版の追加曲やアレンジ曲を収録したものも発売されている。

赤い夜における戦闘シーンで、特に駆が活躍する場面で流れるのがこの曲である。駆は当初は何の能力も持っていなかったが、戦いのさなか、生まれつき視力がない自らの右目が覚醒し、未来予知の異能・劫の目を手にする。そうしたなかで、この曲はイントロの張り詰めた空気感で赤い夜の雰囲気を表現しつつ、そこから突き抜けるように爽やかで真っすぐな旋律を据えることで、理不尽に打ち勝たんとする少年少女たちの強い意志を感じさせる。間奏のピアノの音色で一旦溜め、そのすぐあとに怒涛の打ち込みを展開することによって、未来を先読みするという異能を曲のなかでうまく表現している。

未来を先読みする、というか、厳密には望んだ未来を意識的に引き寄せる力なのですが、その規格外な能力をよく表現した曲だと思います。