レアがおくる横スクロールアクション・スーパードンキーコングより、
David Wise作曲、『Aquatic Ambiance』。
「サンゴの海」をはじめ、いくつかの水中ステージで流れます。
任天堂のアーケードゲーム・ドンキーコングの後継作として、イギリスのレア社が開発した本作。コング島に暮らすドンキーコングとディディーコングは、バナナ泥棒団のクレムリンに奪われたバナナを取り戻すべく、ジャングルの奥地へと旅立つことになる。当時最先端の技術を用いたハイクオリティのグラフィックとサウンドが特徴で、3DCGを本格的に導入して描かれた多種多様なステージは、豊富なギミックや手堅いゲームバランスと相まって、非常に完成度の高い仕上がりとなっている。後にゲームボーイやアドバンス向けにリメイクされたほか、各種任天堂機にてバーチャルコンソールとして移植されている。
本作の音楽を担当するのは、当時レア社に所属していたサウンドチームより三名(David Wise氏、Eveline Fischer〈現姓はNovakovic〉氏、Robin Beanland氏)。そのなかでも数多くの楽曲を手がけたWise氏は、ゲーム音楽という枠にとらわれないアンビエント、イージーリスニング、エレクトロニカなどのジャンルをも本作に取り込んでいて、いずれの楽曲もおよそスーファミ音源とは思えないほどの美麗さを誇る。サウンドトラックはオリジナル音源とアレンジ音源のものがあり、曲名の表記が統一されていない。
「サンゴの島」や「ヘドロのみずうみ」など、水に関わるステージで流れるのがこの曲である。さながら環境音楽のように主張しないメロディーラインに、美しい音色の組み合わせが生み出す寂寥感が、生命の源たる水の持つ神秘的な特徴をあますことなく描き出している。タンバリンのようなジングル音がビートを刻むなか、その背後で伴奏として奏でられ続けるコード進行は、水の雰囲気という曲名にぴったりな臨場感を醸している。水中の没入感を見事なまでに表現した一曲である。
Wiseさんのお気に入りでもあるそうで、たびたびアレンジされていますね。トロピカルフリーズの『しんぴの深海』は同じく水中ステージとして人気ですが、WiiU音源のそれと比べてもスーファミ時代のこの曲がいかに技術的に突出しているかが窺えます。『しんぴの深海』もあわせてどうぞ。