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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#059 『Powell』(菊田裕樹/聖剣伝説3/SFC)

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スクウェアがおくるアクションRPG聖剣伝説より、

菊田裕樹作曲、3の『Powell』。ラビの森と月夜の森で流れます。

聖剣伝説シリーズのうち、ナンバリング3作目として登場した本作。総勢六名の主人公のなかからメインの主人公一人と仲間二人を選び、その組み合わせによって何通りにも変化し得る物語を進めていくことになる。個性豊かなキャラクターたちが紡ぐトライアングルストーリーは、大まかな流れは共通しているものの、細部の展開に違いがあり、分岐によって自由度の高いシナリオを堪能できる。加えて成長要素としてクラスチェンジシステムが搭載されていて、自分好みにパーティを編成して物語を切り拓くことができる。戦闘は前作と比べてスローテンポ化し、アクション性がやや削られたが、必殺技と魔法を軸とした独自性のあるバトルが楽しめる。後にスイッチ版の聖剣伝説コレクションに移植された。

本作の音楽を担当するのは菊田裕樹氏。当時スクウェアに所属していた作曲家で、前作に続き本作でも単独で作曲している。前作では、スーファミの音源をすべて使い切るという贅沢な仕様が祟って一部音割れする現象があったが、本作ではその対策として極力音数を減らし、シンプルに表現することを目指したという。派手さよりも素朴さに重きを置いたアコースティック寄りの楽曲が多く揃っている。サウンドトラックは通常版のほかデジタル配信もされている。

ラビの森および月夜の森で流れるのがこの曲である。一音一音が短めなマリンバを主旋律に据え、細かい間隔でメロディアスに展開させることで、森にふさわしい神秘的な空気感を漂わせる。そこにギターと笛の音を加えることにより、幾度となく反復されるミニマルなフレーズに独特な奥行きを生み出している。歯切れが良く愉快だが、同時にすこし切なくもあるような印象を与え、特に1分43秒~2分の間、さながらモールス信号のように淡々と同じ音程の音色を繰り返すことで、不思議と心地良い興を添える。音数を絞ってなお、森を手探りで探索する気分を見事なまでに没入感たっぷりに彩る一曲である。

シンプルだけど、いろんな工夫を凝らしているのが感じられる曲ですね。

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追記:記事執筆時点ではリメイク発売前だったので紹介できませんでしたが、TRIALS of MANAのアレンジ(スクエニ所属の山﨑良さんによる)もどうぞ。原曲らしさをとても大事に尊重したアコースティックなアレンジです。

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