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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#061 『潮鳴り』(折戸伸治/CLANNAD/PC)

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Keyがおくる恋愛アドベンチャーCLANNADより、

折戸伸治作曲、『潮鳴り』。主にシリアスなイベントシーンで流れます。

KanonAirに続きビジュアルアーツ美少女ゲームブランド・Keyの第3作として、全年齢向けに登場した本作。バスケットボールの選手として有望視されていたが、怪我を理由に断念して不良になり果てていた高校生の主人公は、廃部になった演劇部の復活を目指す病弱な少女・古河渚との出会いを経て、家族や友達、大切な人との絆を紡いでいくことになる。青春と恋愛はもちろん、家族愛も取り扱った繊細なシナリオが特徴で、通常の学園編のほか、ヒロインとのその後を描くアフターストーリー、さらには本編にてところどころ意味ありげに挿入される幻想世界での出来事などもまとめて収録されている。多彩で魅力的な登場人物が織り成す切なくも温かいシナリオが印象的な、泣きゲーの代表作として名高い仕上がりとなっている。後にPS系列をはじめ、数多くの機種に移植された。

本作の音楽を担当するのは折戸伸治氏、戸越まごめ氏、麻枝准氏。戸越氏は当時、折戸氏と麻枝氏は現在もKeyに所属している作曲家である。このうち麻枝氏は音楽のみならず企画や脚本も手がけている。本作では、膨大な量のテキストに見合ったドラマチックでメロディアスな楽曲が揃っていて、メインヒロインの渚やアフターストーリーに登場する汐の名前にちなんで、水や海を彷彿させる曲名もすくなくない。サウンドトラックはオリジナルのもののほか、一部のインストゥルメンタルの楽曲に歌詞をつけたイメージボーカルアルバムやリミックスアルバムなど、多数発売されている。

物語上の重要なシーンを中心に、シリアスな場面で多く流れるのがこの曲である。潮鳴りとは「海の波が岸に寄せたり返したりするときの音」を意味するが、その曲名通り、この曲は何度も何度も同じフレーズを繰り返し、波のように寄せては返し、寄せては返していく。ピアノのシンプルな旋律の反復は、やがてパーカッションを交えて静かに勢いをつけ、ようやく2分手前でサビに突入する。儚く、それでいて力強く、幾度となく繰り返すことで、揺れ動く心の機微を見事に表現した一曲である。

寄せたり返したりということばの意味と、曲の構成が完璧に釣り合ってますね。アレンジで『潮鳴りII』もありますので、そちらもあわせてどうぞ。

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