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#082 『しんしん』(柳川和樹/フィリスのアトリエ ~不思議な旅の錬金術士~/PS4・PSV)

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ガストがおくる錬金術RPG・アトリエより、

柳川和樹作曲、フィリスの『しんしん』。北アウロ雪原と南アウロ雪原で流れます。

錬金術を題材にしたアトリエシリーズのうち、通算18作目にして不思議シリーズ第2弾にあたる本作。地中の街に暮らし、外界に強い憧れを持つ少女・フィリスは、偶然訪れた錬金術士・ソフィー(前作主人公)に才能を見出され、自らも錬金術士になろうとするも両親に反対を喰らい、二人を説得すべく一年以内に錬金術士の公認試験合格を目指して旅に出ることになる。コンセプトはずばり旅で、探索範囲となるフィールド全般は広大で、拠点となるアトリエも移動式のものであるなど、今までとは毛色の異なるゲームシステムが搭載されている。日数制限が復活したものの、基本的に足りないことはないごく緩やかな縛りとなるよう調整されている。また、試験前後で旅の目的や物語の流れが変わる二段構えのシナリオを採用している。戦闘システムは追撃等が発生せず一人ずつ行動するコストターン制に回帰しているほか、調合システムは結果を大きく左右する触媒という新要素や、大量の材料を使って大がかりなものをつくる超弩級調合などが登場した。新旧要素を詰め込んだ意欲作に仕上がっている。後に追加要素を加えたDX版がPS4、スイッチ、Steam向けに発売された。

本作の楽曲を担当するのは阿知波大輔氏、阿部隆大氏、柳川和樹氏、矢野達也氏の主に四名である。加えて一部のボーカル曲は南壽あさ子氏となるけみちこ氏が手がけている。阿知波氏、柳川氏、矢野氏はいずれも当時ガストに所属していた作曲家である。過去作をいくつか担当していた浅野隼人氏は本作は作曲には不参加だが、ピアノやオルガンの演奏に携わっている。本作では今まで以上にバラエティ豊かな旅の風景にあわせて、多種多様な楽曲が揃っている。作中における時間経過の流れが速いという性質上、フィールドの昼夜で別アレンジに切り替わる要素を実感しやすい一方で、深夜になるとBGMが完全に鳴り止む演出を取り入れている。サウンドトラックはインスト曲を収録したものとボーカル曲を収録したアルバムとが発売されている。

北アウロ雪原および南アウロ雪原で流れるのがこの曲である。一面銀世界に覆われた雪景色ならではの切なさを、どこかドラマチックに響く曲の展開のなかに漂わせている。イントロの煌びやかな高音と、裏拍を取るピアノの音色には、ひんやりとした響きを帯びていて、そこにストリングスや鐘の音が加わることで、きらりと輝く雪結晶の美しさを連想させる。夜になると主旋律を奏でていた鐘は鳴り止み、ピアノとストリングスのみの物静かなアレンジに移り変わることで、しんと静まり返った様子と、しんしんと降り積もる雪の情景が、同時に脳裏に浮かぶような印象を与える。冷たくも美しい雪の世界を臨場感たっぷりに表現した一曲である。

この曲に限らず、たしか洞窟のなかも夜アレンジがかかるはずです。『しんしん~夜~』もあわせてどうぞ。

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