VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#093 『夜廻~メインテーマ』(古賀美香/夜廻/PSV)

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日本一ソフトウェアがおくる夜道探索アクション・夜廻より、

古賀美香作曲、『夜廻~メインテーマ』。エンディングで流れます。

夜の怖さをテーマにしたホラーアクションゲームとして登場した本作。いなくなってしまった愛犬と姉を探すべく、少女は様々な怪異が潜む夜の街を歩き回ることになる。少女は有効な対抗手段を持たないため、お化けに捕まれば成す術もなく即ゲームオーバーになる。そのストイックなゲーム性と、可愛らしいデフォルメ調のグラフィックが描き出す闇夜の恐怖が相まって、独特な世界観を形成している。暗闇への本能的な怖さをうまく引き出してくれるような扇情的なホラー作品に仕上がっている。後にPCやスマホに移植されたほか、続編の深夜廻とセットでスイッチ向けにも登場した。

本作の音楽を担当するのは古賀美香氏。日本一ソフトウェアに所属するサウンドスタッフと思われる。本作では、お化けが接近してくると少女の心臓音が高まるという演出があるためか、道中の音楽は軒並み環境音で構成されている。そうしたなか、唯一スタッフロールで流れるメインテーマは、クラシカルなピアノを用いたものとなっていて、非常に象徴的かつ印象に残る出来栄えとなっている。サウンドトラックはSteamでデジタル配信されているほか、続編のプレミアムセットにシリーズ2作の楽曲をあわせて収録したものが発売されている。

スタッフロールで流れるくだんのメインテーマがこの曲である。ここに至るまで環境音ばかりだったこともあり、ピアノによる切なさと美しさが共存する旋律は一際記憶に残りやすい。ゆっくりとしたイントロから始まり、徐々に恐怖心を煽る金属音が加わり、さらにはワルツさながらのリズミカルな曲調へと変化すると、伴奏にストリングスを迎えて大きな盛り上がりをみせる。終盤では階段を駆け下るように高音から低音へと変遷していき、最後の最後でまた高音に逆戻りしつつ、それとは別に重低音を響かせることで、ホラーならではの後を引く焦燥感を演出する。美しくも恐ろしい夜の雰囲気を感情豊かに表現した一曲である。

夜の怖さというテーマをあまりにも見事に、二分ほどの尺に集約していて素晴らしいですね。