神吉由美子作曲、『Mute City』。同名のコースで流れます。
スーファミのローンチタイトルとして登場した本作。26世紀という現代からはかけ離れた未来を舞台に、九つの惑星をめぐる宇宙規模のグランプリを勝ち抜いていくことになる。圧倒的なハイスピードで繰り広げられるスリリングさが最大の特徴である。スーファミならではの技術力を活かし、回転や逆走といった大胆な表現を取り入れることで、時速400kmを超える近未来の競技の臨場感をうまく引き出している。任天堂製のレースゲームの礎を築き上げた傑作に仕上がっている。
本作の音楽を担当するのは石田尚人氏と神吉由美子氏。当時任天堂に所属していた作曲家で、石田氏が作曲しているのは2曲のみ、残りはすべて神吉氏によるものとなっている。本作ではスーファミ黎明期のサウンドを印象付けるようなシンプルながらも格好良い楽曲が揃っていて、軽快さが光るフューチャリスティックなものが多い。サウンドトラックはオリジナル音源のみのものは発売されていないが、アレンジ音源のみのものや一部オリジナルも含めたサウンドセレクションなどが存在する。
MUTE CITYはどのリーグを選択しても最初にプレイすることになるステージで、癖がすくなくバランスの取れたコース設計が特徴である。宇宙最大の中心都市として、疾走感あふれるメロディーラインがサイバーパンクな外観をうまく反映している。イントロで助走をつけるかのように溜めてから、頃合いを見計らって始まるブラス音による主旋律は、勇ましくありながらも決して騒々しくはない、自然と耳馴染みするような独特な控えめさを内包している。序盤のコースにぴったりな一曲である。
以降のシリーズで何度もアレンジされていますが、個人的に好きなアレンジを挙げるとすれば、ロックっぽさが際立つ庄司英徳さんによるGXの『Cover Of Mute City's Theme』か、ピアノを用いることで原曲の静けさを表現した福田康文さんによるスマブラXの『MUTE CITY』あたりでしょうか。二つともどうぞ。