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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#108 『ジョード~運命のとらわれ人』(杉森雅和/ゴーストトリック/NDS)

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カプコンがおくるアドベンチャーゴーストトリックより、

杉森雅和作曲、『ジョード~運命のとらわれ人』。ジョード関連のシーンで流れます。

逆転裁判シリーズで知られる巧舟氏がディレクターを務める本作。命と記憶を奪われた主人公・シセルは、タマシイとなって自らの死の真相を探るために、一夜限りの追跡劇を繰り広げることになる。物体に憑依する能力・トリツクと、トリツいた物体を動かす能力・アヤツルを駆使してトリックを暴いていく新感覚の謎解きを楽しむことができる。逆転裁判譲りのシリアスだけどユーモラスなカラっとした世界観に、オカルトとミステリーが入り混じった奇妙奇天烈な作風が融合している点が特徴である。総じて斬新さが光る仕上がりとなっている。後にスマホ向けに移植されたほか、リマスター版がスイッチ、PS4、XboxOne、PC向けに登場した。

本作の音楽を担当するのは杉森雅和氏。当時、音楽制作会社デザインウェーブに所属していた作曲家である。かつてカプコンに在籍していた頃に、初代の逆転裁判の作曲を務めた経歴があり、本作のサウンドにおいても作品全体を通して見え隠れする逆転裁判らしさを受け継いでいる。風変わりな死生観が蔓延する本作では、謎が謎を呼ぶシナリオにふさわしい、ミステリアスでありつつも情熱的な楽曲が多く揃っている。サウンドトラックは限定盤の特典として同梱されていたほか、デジタル配信もされている。

ジョード関連のシーンで流れるのがこの曲である。逆裁よろしく各キャラにテーマ曲が割り振られる本作において、ジョードは一際悲劇的な物語を背負った登場人物である。その彼のテーマであるこの曲は、電子音主体の緻密かつ鮮やかな曲調に仕上がっている。小刻みに同じフレーズを繰り返すことで、キャッチーでアップテンポな音使いのなかに確かな哀愁を滲ませている。中盤で挿入されるチップチューンの音色は、過去に縛られ続けているジョード自身の運命を象徴しているかのような印象を与え、淡々としつつも力強い余韻を漂わせる。独特な落ち着きと緊張感が共存する一曲である。

曲の雰囲気がなんとなくですがイトノコ刑事のテーマ曲に似ているような気がします。

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追記:記事執筆時はリマスター版発売前でしたが、リマスターに伴って曲がアレンジされ、北川保晶さん編曲でディスコチックな感じになってます。そちらもあわせてどうぞ。

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