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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#123 『THE ROUND TABLE』(中鶴潤一/エースコンバット・ゼロ ザ・ベルカン・ウォー/PS2)

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ナムコがおくるフライトシューティング・エースコンバットより、

中鶴潤一作曲、ゼロの『THE ROUND TABLE』。ミッション10の後半で流れます。

エースコンバットシリーズのうち、5の前日譚としてナンバリングとは異なる立ち位置で登場した本作。膨大な天然資源の発掘を契機に、超大国ベルカ公国により圧倒的な軍事力をもって蹂躙される隣国のウスティオ共和国は、成す術もなく次々と国土が占領されるなか、緊急で空師団を編成、そこに所属する主人公・サイファーは、空を駆ける未曾有の戦いに身を投じることとなる。シリーズおなじみの渋い作風を踏襲しつつ、本作ではよりいっそうパイロットたちの生き様をドラマチックに描いていて、プレイヤーの戦闘行動によって無線の内容や遭遇する敵部隊、ムービー演出にまで影響するエーススタイル・ゲージシステムが採用されている。PS2最後のシリーズ作品として、ストーリー・サウンド・演出いずれもトップクラスの完成度を誇る仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは大久保博氏、小林啓樹氏、中鶴潤一氏、中西哲一氏の四名。前作と同様の布陣で、いずれも当時ナムコに所属していたか今も所属している作曲家である。このうち中鶴氏は前作に引き続きシリーズ二度目の作曲で、以降もシリーズに携わることとなる。エース同士のドッグファイトに焦点を当てた本作では、前作・前々作で培ってきたオーケストラサウンドに加え、毛色の異なるフラメンコ調の曲をも取り入れることで、情緒的な雰囲気を生み出すことに成功している。サウンドトラックは2枚組で収録されている。

ミッション10「MAYHEM B7R制空戦」の後半戦で流れるのがこの曲である。物語中盤で挑む任務で、通称円卓と呼ばれる空域を舞台に凄絶な空戦を繰り広げられていくものだが、後半には敵エース部隊が出現する。絶対的な劣勢をひっくり返して勝利へと導く、その緊張感あふれる戦いを、情熱的なギターと軽快なカスタネットを主軸に据えたエスニックサウンドで派手に彩る。スパニッシュ系の独特な曲調がもたらす哀愁が、30秒頃から本格的に合流するオーケストラと相まって、戦場の張り詰めた空気感に絶妙な小気味良さを添える。このミッションを通じて主人公は「円卓の鬼神」という異名を授かることになるが、ずばり「円卓」を意味する曲名とあわせて、非常に象徴的でお誂え向きな称号である。哀愁と情熱、冷静と緊張とが高度に混ざり合った一曲である。

スパニッシュギターの痺れるような格好良さが見事に表現されていますね。名曲揃いのシリーズのなかでもゼロは本当に好きな作品です。