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#126 『The valedictory elegy』(桜庭統/バテン・カイトスII 始まりの翼と神々の嗣子/GC)

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モノリスソフトトライクレッシェンドがおくるRPGバテンカイトスより、

桜庭統作曲、2の『The valedictory elegy』。通常戦闘で流れます。

ゼノシリーズで知られるモノリスソフトと、トライエース作品のサウンド部分を多く担当してきたトライクレッシェンドの共同開発作品として送り出されたバテンカイトス、そのナンバリング2作目にあたる本作。前作の20年前を舞台に、帝国アルファルドの精鋭暗黒部隊に所属する精霊憑きの少年・サギは、何者かの策略により皇帝暗殺の罪を着せられてやむなく逃亡、陰謀の真相を確かめるべく旅に出ることになる。前作同様、戦闘システムはカードゲーム風のマグナスバトルを採用していて、ターン制からリアルタイム制に変更されたことを受けて、バトルテンポが大幅に改善された。手札の取捨選択の重要性が増し、よりスリリングな駆け引きが楽しめるようになるなど、全体的に前作から順当に進化した仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは桜庭統氏。前作に引き続き単独で作曲していて、かつて日本テレネットウルフチームに所属していた経緯から、そこから独立して設立されたトライエースとは縁があり、そのトライエースに馴染み深いトライクレッシェンドが開発する本作においても、作曲家としての手腕を遺憾なく発揮している。本作の神秘的で幻想的な世界観を表現するにあたって、ファンタジー調の上質なサウンドが多く取り揃えられていて、一部前作の楽曲のアレンジも含まれる。サウンドトラックは3枚組で発売されている。

通常戦闘で流れるのがこの曲である。前述した独特な戦闘システムゆえに、本作は通常戦闘であっても長丁場になりやすいが、1ループ3分近くに及ぶこの曲が流れることで、中弛みすることなくバトルを盛り上げてくれる。前作の『The true mirror』と同じく主旋律はバイオリンが担っているが、前作に比べてバトルテンポが向上した影響もあってか、よりスピーディーな曲調となっている。全編サビと評されるほどに疲れ知らずのメロディーラインは、三連符や転調を効果的に用いながらループに至るまで一切の隙を見せることなく展開されていく。47秒からはしばらく、歪みを利かせながら溜め続け、57秒で再びバイオリンを加えて徐々に勢いを盛り返す。そのまま突っ走るのではなく、あえて1分7~14秒にてオルガンが連続で三連符を奏でて絶妙に焦らすことで、続く1分17秒からの展開をより鮮やかに引き立てている。1分31秒のバイオリンフレーズは非常に快く、1分44秒のオルガンの独壇場もまた非常に聴き応えがある。そこに1分54秒から高音主体で技巧的なバイオリン演奏を披露することで、曲終盤に至ってなお華麗な印象を維持し続ける。戦闘曲のエッセンスが結集された傑作である。

作中でギターアレンジが存在するほか、スマブラforには桜庭さん本人によるセルフアレンジがあります。後者は間奏に新パートが加えられていたり、よりバイオリンが厳めしく、ロックっぽい仕上がりになっています。『The valedictory elegy(guitar ver.)』とforのアレンジ版『The valedictory elegy』、あわせてどうぞ。

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