VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#134 『Seashore War』(David Wise/ドンキーコング トロピカルフリーズ/WiiU)

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レトロスタジオがおくるアクション・ドンキーコングトロピカルフリーズより、

David Wise作曲、『Seashore War』。ステージ6-2のいてつくビーチで流れます。

ドンキーコングシリーズ初のHD対応作品として本作。北の海からやってきたバイキング集団のザ・スノーマンズにより氷漬けにされてしまった常夏の島・ドンキーコングアイランドを取り戻すべく、ドンキーコングは氷の世界を冒険することになる。WiiUならではの美麗なグラフィックとやり応えのある難易度が魅力で、前作のリターンズのゲーム性を概ね踏襲しつつ、プレイアブルキャラクターとしてディクシーコングクランキーコングが追加、水中を泳いだり道具や仕掛けを引っ張ったりする新アクションも導入された。全体的に手堅くまとまった仕上がりとなっている。後に新要素を加えてスイッチにも移植された。

本作の音楽を担当するのはDavid Wise氏。2005年にGBAスーパードンキーコング3の作曲に携わって以来、実に9年ぶりのカムバックであり、長らくシリーズから離れていた氏の復帰作として一際注目を集めることになった。本作ではオリジナルの作曲はもちろん、過去作のメロディーを引用したアレンジも交えている。とりわけ水中ステージではスーパードンキーコングの『Aquatic Ambiance』をモチーフにした数々の良アレンジを生み出している。その一方でボス戦では一転、ハードなメタル調なども取り入れていて、もともとジャンルの垣根を越えた楽曲づくりに定評のある氏の新境地を堪能できる。サウンドトラックは未発売だが、一部の楽曲については氏がツイッターで言及している。

いてつくビーチで流れるのがこの曲である。元々はコングたちの故郷であったはずの島だが、ザ・スノーマンズに乗っ取られたせいで一面銀世界へと様変わりしている。ダメージを喰らうほど極寒な海が広がる終盤のステージを彩るにあたって、手始めに波が寄せては返すような調子でシンセストリングスを響かせることで、圧倒的な神秘を漂わせる。50秒手前で本格的に主旋律が入ると、コーラス主体の何人たりとも寄せ付けない冷たい伴奏に、変わり果てた故郷への思慕を窺わせる温かなアコースティックギターの音色がよく映える。後半の2分35秒にはハーモニカのパートがあり、すでに十分に哀愁が滲んでいるが、さらにいっそう独特な切なさを感じさせる。うっとりするような心地良い雰囲気に満ちた一曲である。

この曲は本作のなかでもWiseさんお気に入りの一曲だそうですね。

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