VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#139 『Castle in the Mist』(大島ミチル/ICO/PS2)

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SCEがおくるアクションアドベンチャーICOより、

大島ミチル作曲、『Castle in the Mist』。オープニングデモで流れます。

「この人の手を離さない。僕の魂ごと話してしまう気がするから」という儚くも印象的なキャッチコピーの本作。謎に包まれた霧の古城を舞台に、生贄の少年イコと囚われの少女ヨルダが、外の世界を目指して壮絶な逃避行を繰り広げることになる。徹底的にこだわり抜いた幽玄な世界観と、手を繋ぐというシンプルながらも切なさに満ちたアクションが特徴で、多くは語らずとも雰囲気で魅せる仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは映画やドラマなど幅広い分野で活躍している大島ミチル氏と、Pentagonの村山光国氏および山崎耕一氏である。これに加えさらに編曲で金子昌晃氏も参加している。雰囲気重視の世界観に合わせて、環境音や効果音を中心に本作のサウンドは形成されている。本作のメインテーマである『ICO -You were there-』にはイギリスの少年合唱団リベラよりSteven Geraghty氏がボーイソプラノとして起用するなど、音楽へのこだわりが強く感じられる。サウンドトラックはボーカル曲やその対訳も含めて収録されたものが発売されている。

オープニングデモで流れるのがこの曲である。曲名は物語の舞台である霧の城をずばり指し示していて、アコースティックギターの優しく温かい三拍子のリズムが、圧倒的な静寂のもとに佇む巨大な城、そこに潜む影のごとき異形の者たち、それらが醸す神秘的な風情を見事に体現している。言葉は通じずとも、ともに自らの運命を変えるべく城からの脱出を試みる少年と少女の不思議な関係性を、ほとんど変わることなく繰り返される素朴な伴奏と、優しくも美しい静謐なメロディーラインによって鮮烈に描き出している。24~28秒や43~47秒、1分手前から始まるフレーズなど、ときにトレモロを駆使して震えるような音色を奏でることで、いっそう引き込まれるような独特な没入感を生む。本作の幕開けを彩るにふさわしい叙情的な温もりに満ちた一曲である。

ループしない類の曲ですが、だからこそ最初から最後まで物語性に満ちた感じがしますね。話に挙がった『ICO -You were there-』もあわせてどうぞ。

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