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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#168 『祈りの鐘は鳴らない』(中島享生/エナジーブレイカー/SFC)

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ネバーランドカンパニーがおくるシミュレーションRPGエナジーブレイカーより、

中島享生作曲、『祈りの鐘は鳴らない』。ラストダンジョンの夢幻聖院で流れます。

エストポリス伝記ルーンファクトリーなどで知られるネバーランドカンパニーが、スーファミでの最後の作品として送り出した本作。一度崩壊した世界を舞台に、ザムリア島に住む女性・マイラは、夢のなかに見る記憶のない自分の姿を追い求めて、時空を超えた冒険へと旅立つことになる。クォータービュー型のシミュレーションRPGで、移動や探索はRPG形式で、戦闘はシミュレーション形式で進行する。シナリオに影響はしないが、主人公の態度に応じて会話内容が微妙に変化するライブリートークシステムも導入されていて、丁寧につくり込まれた多彩なアニメーションが楽しめる。スーファミ末期ならではの円熟したクオリティを誇る仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは塩野康範氏、中島享生氏、山本祐世氏の三名。いずれも当時ネバーランドカンパニーに所属していた作曲家である。このうち中島氏はメインコンポーザーを務めていて、塩野氏は3曲、山本氏は2曲のみ参加している。ネバーランド特有の質の高いサウンドは本作でも顕著で、オリジナルサウンドトラックのみならず、発売から十年後にアレンジ入りのサントラも販売されるなど、音楽面の人気は根強い。

夢幻聖院で流れるのがこの曲である。記憶の謎が明かされるにつれ、重くのしかかる世界の真実、それを抱えつつ向かう先のラストダンジョンである。悲しくも勇ましいメロディーラインが特徴で、イントロの第一音から並々ならぬ緊張感を漂わせる。ギターやコーラスを思わせる音色を用いて奏でられるシリアスな曲調は、派手に乱高下する主旋律の音程と、その背後で奏でられる息もつかせぬ疾風怒濤の伴奏の組み合わせによって、もう後戻りできない印象を与える。どこか切なく詩的な響きを持つ曲名と相まって、非常に強い悲壮感を漂わせる一曲である。

この曲は残念ながら上述のアレンジサントラにアレンジ版が含まれていないのですが、スーファミ音源ですでに完成されている感じがしますね。