VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#194 『心奮わす「窮鼠の神楽」』(浜渦正志/シグマ ハーモニクス/NDS)

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スクエニがおくるミステリーRPGシグマハーモニクスより、

浜渦正志作曲、『心奮わす「窮鼠の神楽」』。式札キュウソを装備した際の戦闘曲。

推理要素とRPG要素を融合させた意欲作として登場した本作。逢魔の到来により廃墟と化した世界を舞台に、逢魔に対抗する手段を持つ音使いの一族の次期頭首・黒上シグマは、幼馴染で札使いの月弓ネオンとともに、奪われた未来を取り戻すべく時空を超えた調査に赴くことになる。どこかレトロな趣のある和洋折衷の世界観のもと、音楽を中心に据えた独特なゲーム性が特徴で、事件を捜査するアドベンチャーパート、刻音と呼ばれる証拠品や手がかりを集めて推理をおこなう超推理パート、そして推理の出来不出来で敵の強さが変わるバトルパートが存在する。戦闘は式札と呼ばれるカードを選択して進行し、式札のなかには戦闘中に流れる楽曲を変更する特性を持つものがあるなど、一風変わったシステムとなっている。斬新さが光る仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは浜渦正志氏。マニピュレートに関しては鈴木光人氏が担当している。ともに当時スクエニに所属していた(鈴木氏は現在も在籍している)作曲家である。本作はとりわけ音楽に力を入れた作品で、携帯機でありながら全曲生音でストリーミング再生しているため、いずれの楽曲もかなり活き活きとした高音質で奏でられる。ミステリアスでリズミカルな透明感に満ちた曲調のものが多く揃えられている。サウンドトラックは未使用曲や主題歌も含めて網羅的に収録されている。

キュウソを装備した際に流れるのがこの曲である。規則的に鳴り響くピアノの重低音と、ストリングスの伸びやかな旋律が印象的で、厳粛な雰囲気を纏ったピアノの伴奏に、艶やかで品やかな弦楽の音色が加わることで、メロディーラインの美麗さを引き立たせている。2分手前、二度目のサビが過ぎたあたりで挿入されるパートは、さらに美しさに磨きをかけたストリングスと、今までの重々しさから打って変わって軽やかで幻想的な音階を奏でるピアノの音色が合わさって、琴線に触れるような開放感を演出する。曲名通りの神秘的な昂揚感を生み出してくれる一曲である。

戦闘性能の良い式札をとるか、気に入った音楽を奏でてくれる式札をとるか……やはり後者、ですかね。