VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#198 『BRIGIT』(音羽雪/フリー素材)

www.nicovideo.jp

Amor Kanaやmuzieで配布されていたフリー素材より、

音羽雪作曲、『BRIGIT』。TRUE REMEMBRANCEなどで使われています。

ヒーリングにアンビエントワールドミュージックを融合させた、独自の音楽スタイル「Natural Sound」を掲げて活動する音羽雪(おとは・ゆき)氏。癒しの旋律を追求して、90年代後期からインストゥルメンタルの楽曲を作曲し始め、氏の運営していたサイト・Amor Kanaでは、様々なコンセプトに基づいたオリジナル曲が提供されていた。残念ながらサイトは閉鎖済みで、同じく活動の拠点としていたmuzieも2017年にサービスが終了し、今ではBIG UP!で数曲公開されているのみとなっている。

Amor Kana時代に女神シリーズと称して発表していた作品群のうち、BRIGITシリーズは北欧神話(サイト内ではそう表記されていたが、厳密にはケルト神話)の女神ブリギットを題材としている。そのなかでも女神の名をそのまま冠したこの曲は、シリーズの顔とも言うべき力作で、有名どころで言うと、里見しば氏のフリーのサウンドノベル・TRUE REMEMBRANCEのタイトル画面で用いられたのが印象的である。TRUE REMEMBRANCEは雪の降りしきる街で起こる小さな記憶と秘密をめぐるお話で、その作品にてこの曲はタイトル画面で流れるものとして、切ない物語の幕開けを静かに飾っている。

オルゴールの優しい音色から始まり、三拍子特有の不安定さのなかで懸命に奏でられる旋律は、ハープやストリングスを加えながら徐々に盛り上がっていく。その洗練されたメロディーラインは、どことなく女神にふさわしい高貴で神聖な雰囲気を纏わせているが、そこに胸を締め付けるような悲哀をも滲ませることで、midi音源ならではの素朴な儚さと美しさを表現している。豊穣と癒しと詩の女神であるブリギットに思いを馳せるような一曲である。

なんとなく、あまりにこの曲とTRUE REMEMBRANCEの相性が良いものですから、はじめは書き下ろしかと思っていました。