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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#213 『デラーリン戦』(戸高一生/カエルの為に鐘は鳴る/GB)

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任天堂がおくるアドベンチャーカエルの為に鐘は鳴るより、

戸高一生作曲、『デラーリン戦』(仮称)。デラーリンとの戦いで流れます。

1992年にゲームボーイ向けに発売された本作。悪の大魔王・デラーリン率いるゲロニアン軍にさらわれてしまったティラミス姫を取り戻すため、サブレ王国のおっちょこちょいな熱血王子が旅に出るも、なぜかカエルに変身してしまったりしてドタバタな冒険を進めることになる。アドベンチャーアクションRPGを合わせたような横スクロール型のゲーム性となっていて、人間とカエルとヘビの三つの姿を切り替えながら種々様々なギミックを解いていく。戦闘は王子と敵のステータスによって自動で勝敗が決する、完全に運用素を排したシステムを採用している。シナリオ面では、いたるところにパロディやジョークの数々が待ち受けるシュールさが、笑いあり涙ありの冒険活劇を鮮やかに彩り、全体的に珍妙なコメディタッチながらも高い完成度を誇る仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは戸高一生氏。任天堂に所属する作曲家で、当時はまだデビューした間もない頃だった。本作は初めて氏が全曲単独で作曲をおこなった作品であり、氏の得意とするコミカルでユーモラスな作風は、音数のすくないなかでも存分に発揮されている。ニンテンドーサウンドセレクションに本作より『メインテーマ』と『王子の冒険』が収録されている以外は、サウンドトラック未発売のため正式な曲名は明かされていない。

宿敵デラーリンとのラストバトルで流れるのがこの曲である。先述の通り戦闘は原則的にオートバトルだが、ラスボス戦ではすこし工夫を凝らして、敵のバリアを掻い潜ってタイミングよく攻撃をすることになる。そうしたなか、チッチッと鳴る軽快なドラムから始まり、勇ましさと物悲しさを兼ね備えた旋律を奏でると、キャッチーで耳に残りやすい聴き心地を生む。1ループが短いながらも、終始ノリの良い勢いで突っ走ることで、最終決戦らしい緊張感と、本作ならではの愉快な空気感を強く印象付ける。ここに辿り着くまでの熱い展開と相まって、シンプルだが非常に昂揚感を駆り立ててくれる一曲である。

短い音で歯切れ良く、高音を散りばめてスリリングな感じに……と、全体的に音のバランスがいいですね。