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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#283 『天空界ステージ3:嵐の中~月』(作曲者不明/ドラえもん のび太と3つの精霊石/N64)

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藤子・F・不二雄著の漫画「ドラえもん」を原作とする、

エポック社がおくるアクション・のび太と3つの精霊石より、

作曲者不明の『天空界ステージ3:嵐の中~月』(仮称)。

天空界の三番目のステージ、嵐の中から月へと向かうところで流れます。

ドラえもん」を原作とするキャラクターゲームとして、ファミコン時代から数多くのドラゲーを手がけてきたエポック社の64初参戦タイトルにあたる本作。大地界、海洋界、天空界の三つの世界から成る妖精界を舞台に、天空界の王女・コロナは、復活した魔王を封印すべく人間界にいるドラえもんたちに助けを求めにやってくる。射程やジャンプ力など、各キャラに固有の武器や性能差があることが特徴で、物語冒頭で奪われたひみつ道具を都度奪回しながら、3D空間でステージクリア型のアクションに挑んでいく。アクションに留まらずシューティングやレースゲーム的な側面もあり、64黎明期ながらも意欲的な仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当している人物に関する情報は、スタッフロールがゲーム中になく、サウンドトラック等も存在しないため、作曲者・曲名ともに不明である。これは2の光の神殿でも同様のことだが、3のSOSではようやくスタッフロールが登場し、すくなくとも3に関しては黒岩東彦氏が作曲を担当していることが判明している。担当者の詳細は定かではないが、楽曲の豊富さとそのクオリティは特筆に値するもので、穏やかな曲調のものからシリアスな曲調のものまで、ステージの雰囲気に合った良曲が揃っている。

コロナの出身地でもある天空界は、本作においては最後に訪れることになるワールドである。クライマックスに向けて侵入者を拒むように叩きつける豪雨と大嵐のなかを、おなじみのひみつ道具タケコプターを用いて突き進む三番目のステージ(嵐の夜空)で流れるのがこの曲である。ところどころに浮かぶ浮き島を伝いながら激しい雷雨を突破していく困難な道のりを、ザアザアという粗削りな雨のノイズとともに疾走感あふれる勇壮なメロディで表現している。この曲には厚い雲を突破した暁にノイズが消え去るインタラクティブな仕掛け(上記動画では47秒あたりから)が用意されていて、そのヴィヴィッドな音使いが、晴れ渡る夜空に燦然と輝く三日月をいっそう美しく彩ってくれる。1ループは短いが、その短さのなかに格好良さが凝縮されている。

曲そのものはもちろんのこと、雲の上はいつも晴れ、という前向きなメッセージ性も良いですね。