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#311 『中ボス(アレンジ)』(荒川憲一/幻霧ノ塔ト剣ノ掟/NDS)

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サクセスがおくる3DダンジョンRPG幻霧ノ塔ト剣ノ掟より、

荒川憲一作曲、『中ボス(アレンジ)』。アレンジverにおける中ボス戦で流れます。

3Dダンジョンの金字塔・ウィザードリィを念頭に、古き良き時代のコンピューターRPGを彷彿させる本作。かつて宮廷に仕えるも、秘宝を奪取して幻霧の塔に逃げ込んだ魔術師・ティルファングを倒すべく、冒険者は旅立つことになる。時代相応のグラフィックとサウンドが楽しめるアレンジverと、ワイヤーフレーム調のグラフィックにレトロなサウンドというファミコン風の組み合わせを堪能できるオリジナルverが搭載されている点が特徴で、プレイ中随時切り替え可能である。オールドゲームへの原点回帰を謳うだけのことはあり、味のある雰囲気と硬派なゲーム性を楽しめる一方で、操作性やUI面でやや古典的すぎるきらいがある。レトロな感触を極限まで追求した仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは荒川憲一氏。サクセスに所属する作曲家で、PC98時代からゲーム音楽に携わっているベテランである。上述の通り本作ではアレンジとオリジナルによってBGMが二種類用意されていて、当然ながら用いられる音源も異なっている。比較的制約のすくないアレンジverでの伸び伸びとした音使いと、制約が激しいオリジナルverでのFM音源風の圧迫されたチップチューンとでは、聴こえ方にかなり差がある。サウンドトラックについては、早期購入特典のミニサントラと、通常販売のフルサントラの両方が存在する。

アレンジverにおける中ボス戦で流れるのがこの曲である。オリジナル(『中ボス(オリジナル)』)・アレンジともにイントロから勝負を仕掛けるかのようなパワフルな音色が印象的である。続いて奏でられる、高音から低音まで目まぐるしく這い回るピアノの旋律が、どっしりと響くパーカッションと相まって、美しさよりも禍々しさを喚起させる。26秒頃で本格的にコーラスが加わると、邪悪さがますます強調され、その猛り狂ったような疾走感が、前途多難な冒険者の恐怖心を煽り立てる。50秒あたりではピアノが今まで以上に荒ぶって高速な音階を奏でるが、そうこうしているうちに1分ほどで違和感なくループ部分へと至る。音に翻弄されるような感覚を味わえる、凄まじいプレッシャーに満ちた一曲である。

オリジナルverでは音数のすくなさゆえにメロディーラインの秀逸さが強調されてますね。あわせてどうぞ。

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