VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#313 『菩殺』(庄司英徳/龍が如く 維新!/PS3・PS4)

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セガがおくるアクションアドベンチャー龍が如くより、

庄司英徳作曲、維新の『菩殺』。ラストバトルで流れます。

極道が暗躍する裏社会をテーマとする龍が如くシリーズのうち、見参やOF THE ENDに続くスピンオフとして登場した本作。幕末の激動の時代を舞台に、桐生一馬をモチーフにした坂本龍馬が、土佐藩へのクーデターで失った恩師の仇討ちのために、危険な人斬り集団・新選組に潜入することになる。時代や人間関係こそ江戸末期に則したものに変化しているが、ナンバリングでおなじみの顔ぶれが役どころを変えて数多く出演するオールスター的な内容で、刀に拳に銃まで使いこなせる、幕末ならではのド派手な戦闘システムが特徴である。史実をベースにしつつ、ときに激しい改変を加えた本作の物語は、サブイベントやアナザーストーリーといった寄り道要素も含めて、迫力満点な出来栄えに仕上がっている。

本作の音楽を担当するのは青木千紘氏、穴山大輔氏、小河幸男氏、金子剛氏、興野亮平氏、庄司英徳氏、澤井雄介氏、花田啓太朗氏、福田有理氏、吉田沙織氏、若林タカツグ氏、Hyd Lunch(松崎泰之氏と渡辺博昭氏のデュオ)、on your groove(83key)こと矢崎俊輔氏、ZENTA氏。編曲のみで斎藤悠弥氏も参加している。このうちシリーズおなじみのセガ所属の庄司氏と青木氏が大半を作曲していて、小河氏や興野氏の担当は1曲、穴山氏や金子氏らは2曲ほどに留まっている。いつもながらのシャープで統一性のあるサウンドは健在で、本作から戦闘中のBGMの曲調が状況に応じてシームレスに切り替わるというインタラクティブな仕掛けが導入された。サウンドトラックはVol.1とVol.2で分けて発売されている。

ラスボス戦で流れるこの曲である。数奇な運命の果てにかつての同志と刃を交えることになるこの勝負では、初めは刀一本を用いた一刀の型、次に刀と銃を用いた乱舞の型、そして最後には再び一刀の型で戦う、三つの展開が用意されている。それにあわせて曲調もシームレスに変化し、サウンドトラック収録版(上記動画)においては、第一部は冒頭から3分4秒まで、第二部は3分5秒から5分22秒まで、第三部は5分23秒から末尾までとなっている。第一部では静かに燃え盛るような、悲しくも力強い旋律が奏でられ、続く第二部では、和笛の雅やかな音色とともにぐっと激しさを増した獰猛なギターリフが轟き渡る。一刀の型に回帰する第三部では、徐々にテンポを落とし、しっとりとしたピアノを挿入することで身を切るような切なさを漂わせ、惨たらしいほどの泣きの入ったギターが、それまでの行程を振り返りつつ、歴史に残ることのない戦いに有終の美を飾る。物語が凝縮された一曲である。

この曲ほど有終の美という言葉がふさわしいものはないと思っています。暴力的だけど隠しようもないくらい哀しいところが、シチュエーションと相まって魅力的です。