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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#317 『天の祈り』(すぎやまこういち/ドラゴンクエストIX 星空の守り人/NDS)

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スクエニがおくるRPGドラゴンクエストより、

すぎやまこういち作曲、9の『天の祈り』。天使界で流れます。

ドラクエシリーズのナンバリングタイトルのうち、初の携帯機用作品として登場した本作。主人公は天使で、天使界で起きた大事件に巻き込まれて人間界に転落すると、世界中に散らばった女神の果実を集めながら事件の真相と天使界への帰還を目指すことになる。自分好みにパーティを編成できるキャラメイクと、すれちがい通信による膨大なやり込み要素が特徴で、クリア前は難易度が平易でボリュームも薄味気味だが、クリア後の充実ぶりが本作の大きな魅力と言える。従来のドラクエらしさから脱却し、新たな路線を打ち出した仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのはすぎやまこういち氏。おなじみドラクエサウンドの生みの親で、本作ではいくつか過去作からの流用曲を取り入れつつ、数多くの新曲を作曲している。とりわけ本作ではシリーズの顔とも言うべき序曲のイントロが、実に19年ぶりに大きく変更されたことで注目を浴び、新章開幕の機運を盛り上げてくれる。サウンドトラックはオリジナル音源とシンセサイザー音源をあわせて収録したものや、交響組曲版などが存在する。

天使界で流れるのがこの曲である。天使界は天空に浮かぶ天使たちの住処で、ゲームのスタート地点かつ主人公の故郷である。辺り一面に広がる絶景、緑豊かな自然に覆われた見事な建築物、その紛うことなき神聖さとは裏腹に、流れる曲はひどく寂しげな曲調に仕上がっている。ハープにフルートにストリングスといった、オーケストラの華やかな楽器を用いつつ、あくまで悲しく、切なく、胸を引き裂くような哀愁を漂わせて奏でられるその旋律は、何かにひたすら祈り続けるような印象を与える。後半、3分12秒あたりから転調すると、さらに美しさに磨きがかかり、物悲しさのなかに神秘的な色合いが増していく。透き通るような悲哀に満ちた一曲で、物語を進めていくにつれてこの曲の物悲しさの理由が徐々に明かされることとなる。

東京都交響楽団による交響組曲版はまさにDS音源から正統進化した素晴らしい出来です。あわせてどうぞ。

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