VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を一日一曲を目安に紹介します。

#323 『秘密』(大久保賢・森祐紀/ウィッシュルーム 天使の記憶/NDS)

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CINGがおくる本格ミステリーアドベンチャーウィッシュルームより、

大久保賢・森祐紀作曲、『秘密』。ミラのテーマで、彼女との会話シーンで流れます。

「DSで、ミステリー。」というシンプルなキャッチフレーズのもと、泊まると願いが叶うとされるホテルの一室を巡る一晩限りのディープな群像劇が繰り広げられる本作。どことなく古めかしさを感じさせるロトスコープ調のグラフィックに、主人公のカイルやヒロインのミラをはじめとする、複雑な事情を抱えた魅力的な登場人物たちが織り成す渋さあふれるシナリオが、本作ならではの心地良いアンビアンスを漂わせている。続編としてラストウィンドウも発売されていて、基本的なシステムを踏襲しつつ、こちらは一週間の物語となっている。

本作の音楽を担当するのは大久保賢(現名義は大久保サトシ)氏と森祐紀氏。いずれもT's MUSIC所属の作曲家で、CINGの作品では後にアナザーコードRとラストウィンドウの作曲も手がけることになるタッグである。本作では海外ドラマを思わせる丁寧で落ち着いた作風に寄り添った素朴だけどお洒落な楽曲が多く、サウンドトラックは発売されていないながらも、作中ではバーに立ち寄ればジュークボックスから音楽を聴けるという、世界観に合った粋な計らいが用意されている。

本作の最重要人物である声を失った少女・ミラとのやりとりの際に流れるのがこの曲である。ゆったりと沈み込むように奏でられるピアノの音色は、着実に核心へと迫っていく雰囲気を醸し出し、何らかの深い事情を背負ったミラに対しての、触れてはならないけど触れぬわけにもいかないという心理的なもどかしさを巧みに描写している。ミステリアスでミスティック、メロディアスでメランコリックな曲調が、ミラという人物を、そして本作全体を貫くムードを、ひとまとめに表現している。

続編で流れたときの昂揚感は何物にも代え難いですね。素敵な曲です。