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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#324 『力いっぱい握り締めて』(青山響・桜庭統/テイルズ オブ グレイセス/Wii)

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バンダイナムコがおくる守る強さを知るRPGテイルズオブグレイセスより、

青山響・桜庭統作曲、『力いっぱい握り締めて』。少年時代の戦闘曲。

テイルズのマザーシップタイトル12作目にして、外伝のラタトスクを除くと初のWii用の作品として登場した本作。三つの国がにらみ合う世界・エフィネアを舞台に、領主の息子・アスベルは、仲が良かった記憶喪失の少女・ソフィを守れなかった幼少期の苦い経験を胸に成長するも、7年後に死んだはずのソフィに再会、国同士の波乱の運命に巻き込まれながら守る強さを知ることになる。スタイルシフトリニアモーションバトルシステム、通称SS-LMBSと呼ばれる、従来のLMBSを進化させた新しい戦闘システムを搭載していて、戦況に応じて攻撃の手段を切り替えながら戦っていく。完成度の高い戦闘システムに加え、少年時代と青年時代を体験できるシナリオ、親しみやすいキャラクター造形など、全体的に手堅くまとまっているが、バグの多さが難点で、後に修正を加えたうえで追加シナリオを収録したPS3の移植版・エフが発売された。

本作の音楽を担当するのは青山響(田村信二)氏と桜庭統氏。シリーズ初代のTOP以来、TOIを除いて作曲し続けているおなじみのタッグである。本作では戦闘曲がかなり充実しているのが特徴で、地域ごとに通常戦闘曲が異なっているほか、ボス戦なども複数用意されていて、エフでの新曲も戦闘曲が占める割合が高い。サウンドトラックは無印の楽曲を収録したオリジナル盤は存在するが、エフの追加曲に関しては未だ音源化されていない。

ゲーム開始直後の少年時代の通常戦闘で流れるのがこの曲である。青年時代のウィンドルでの通常戦闘曲『抜刀!研ぎ澄ませ!』のアレンジである。エレキギターを轟かせたクールな青年時代のものとは一転して、こちらはメインメロディーこそ概ね共通しているものの、楽器構成を変えることで全体的にポップでキュートな雰囲気を漂わせている。煌びやかな鉄琴や無垢な笛の音が、少年少女たちが奮闘する健気な様子を彷彿とさせる。30秒過ぎの間奏は、青年時代の激しく唸るエレキギターとは対照的に、勢いを蓄えつつも落ち着いたフレーズを奏で、40秒で鍵盤を滑らかに駆け下るグリッサンドを取り入れることで調子を整える。間奏部分の違いにより、青年時代と比べて1ループにつき10秒ほど短くなっているが、小綺麗にまとまった一曲に仕上がっている。

楽器を変えれば曲の雰囲気ががらっと変わるよ、というのを体現していますね。『抜刀!研ぎ澄ませ!』と聴き比べてみてください。

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