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#339 『tears which died』(細江慎治/アンダーディフィート/AC)

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グレフがおくるミリタリー縦スクロールシューティング・アンデーディフィートより、

細江慎治作曲、『tears which died』。ステージ5で流れます。

旋光の輪舞などで知られるグレフのアーケード用シューティングとして登場した本作。停戦の日を間近に控えた帝国軍と連邦軍による不毛な争いが繰り広げられる。2D縦シューのノウハウを活かしつつ地形要素などを取り入れたハーフトップビュー型のフル3Dの世界観が特徴である。特筆すべきは爆風や煙などが恐ろしいほど緻密に表現されている点で、非常にリアリティのあるグラフィックや演出を楽しむことができる。ステージはぜんぶで5つあり、歯応えのある良好なゲームバランスと戦争の凄惨さをストレートに描いた硬派で陰鬱なストーリーとが相まって、手堅くまとまった仕上がりとなっている。後にドリームキャストに移植されたほか、HD版がPS3Xbox360向けに登場した。

本作の音楽を担当するのは細江慎治氏。音楽制作会社スーパースィープの代表で、アーケードゲームを中心に数多くの作品を手がけてきたベテランの作曲家である。本作はドリキャスに移植される際に、原曲の尺を伸ばしたロングバージョンの新規アレンジが収録された。また、HD版におけるニューオーダーモードの追加曲には、同じくスーパースィープの安井洋介氏も作曲に携わっている。本作の楽曲はいずれも、ミリタリーテイストの重厚な作風にふさわしい、ハードでダークな、そうでありながらも爽快感あふれるテクノサウンドとなっている。サウンドトラックはAC音源、DC音源、HD版の追加曲を収録したものがそれぞれ発売されている。

最終面であるSTAGE5「GRAVEYARD」で流れるのがこの曲である。静謐なピアノイントロの間のみ、作中の一切の効果音が鳴らなくなるという特殊な仕様を採用している。イントロ明けでエレキギターやシンセが加わることで、爽やかだがどことなく哀愁漂う雰囲気を漂わせる。46秒あたりでようやく主旋律が入ると、そのアップテンポで鮮やかな曲調が、戦場がもたらす一時的な陶酔感とその裏に潜む悲痛な覚悟を滲ませる。クライマックスらしい力強いメリハリと昂揚感に満ちた一曲である。ロングバージョンでは後半部分に新たにギターが暴虐の限りを尽くして吠え猛るパートが追加され、いやます戦場の過酷さを表現している。

曲名の意味は「死に絶えた涙」、涙さえもが歿した戦場のことを指していると思うと、良いセンスですね。ドリキャス版のロングバージョンもあわせてどうぞ。

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