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#349 『秋』(田中剛/牧場物語2/N64)

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ビクターインタラクティブソフトウエアがおくるほのぼの生活シミュレーション・

牧場物語より、田中剛作曲、2の『秋』(仮称)。秋の月に流れます。

牧場を開墾し作物を育て、動物を飼育する牧場物語シリーズのナンバリング2作目、GBを含めると通算3作目にあたる本作。前作の数十年後を舞台に、祖父の牧場を継いだ主人公は、花の芽町で三年間の牧場生活を送ることになる。新規イベントが大量に追加され、今まで以上に住人との交流を楽しめる要素が拡充された。また、本作から恋のライバルが登場するようになり、花嫁候補となるヒロインたちとの恋愛要素もいっそう強化された。畑を耕し、家畜の世話をして、ときには祭りや競馬に参加したりして牧場生活を満喫するという、シリーズの基礎が確立した作品となっている。

本作の音楽を担当するのは田中剛氏。CHACKeyの名義でも知られる作曲家で、シリーズには初代から携わっている。最近でこそゲーム音楽界から離れて久しいが、ゆるやかな作風に合わせて牧場物語シリーズのサウンドの方向性を決定づけた第一人者である。本作ではスーファミから64にハードが移行したこと、また、行動範囲が広がったことに伴い、音源が進化しただけでなく楽曲の総数も一段と増え、のどかな生活を楽しく彩ってくれる。サウンドトラックは未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

秋の月に流れるのがこの曲である。秋といえばお月見もあれば収穫祭もある、牧場主たちにとって嬉しい実りの季節であるが、他方で刻一刻と厳しい冬が近付く懸念もある。そうした期待と不安の入り混じった心境を表すかのごとく、この曲は陽気でありつつもどことなく寂寥感が漂う曲調に仕上がっている。素朴な笛の音が奏でる軽快な旋律は、絶えず郷愁を誘いながらも、急き立てるような勢いがある。そこにタンバリンと思しき打楽器のリズムが組み合わさることで、さながらポルカのような民族舞曲を想起させる。1ループ1分にも満たない短さのなかで、奇妙なほど心地良い没入感を誇る一曲である。

30日間もこの短いループの曲を聴き続けたら、頭にこびりついて離れないですよね。短いからこそ映える曲だと思っています。