VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#397 『City of Tears』(Christopher Larkin/Hollow Knight/PC)

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Team Cherryがおくる2Dアクションアドベンチャー・ホロウナイトより、

Christopher Larkin作曲、『City of Tears』。同名のステージ(涙の都)で流れます。

オーストラリアのインディーデベロッパー・Team Cherryの代表作である本作。滅びゆくムシの王国を舞台に、主人公はかつて栄えた文明の廃墟を冒険して己の使命を知ることになる。メトロイドヴァニア系のアクションアドベンチャーで、ときに美しく、ときに恐ろしくもある繊細なグラフィックが特徴である。移動やジャンプ、攻撃といったシンプルな操作性に、スキルやチャームによるオーソドックスなパワーアップ要素が組み合わさっていて、古典的かつ洗練された高難度のゲーム性を楽しむことができる。洞穴や古代都市といった探索し甲斐のある広大な世界で、幻想的であると同時に歯応えもある冒険に挑戦できる仕上がりとなっている。後にスイッチ、PS4、XboxOneに移植されたほか、複数回にわたる大型アップデートが実施された。

本作の音楽を担当するのはChristopher Larkin氏。アップデート後の追加曲も担当している、オーストラリア出身の作曲家である。ピアノを得意としていて、ジャンルとしてはクラシックに関心を寄せる一方で、エレクトロニックやプログレにも造詣が深く、ゲーム以外にもテレビや映画の劇伴を務めている。本作では奇妙に残酷で美しい世界観にあわせて、オーケストラを軸にしたオペラ風の楽曲が揃っていて、滅亡に瀕した王国を静かに照らしてくれる。サウンドトラックは氏のBandcampやSteamのDLCをはじめ、各所でダウンロード販売されている。

涙の都で流れるのがこの曲である。亡国ハロウネストの首都であり栄華の中心であったこの場所は、涙という語が示す通り、常に雨が降りしきるステージである。そうしたなか、甘く柔らかなハープの音色に、天に昇らんばかりの鈴を振るようなソプラノが響き渡る。その凛としたメロディーは、廃墟らしい侘しさを漂わせつつ、過去の栄光の余韻をも感じ取れる華麗さが宿っている。1分40秒からはボーカルに代わってストリングスが主旋律を担い、静けさのなかに、決して色褪せることのない力強さを窺わせる。雨降るなか、身も心も洗われるような感触を味わえる清らかな一曲である。

ボーカルはAmelia Jonesさんが歌っているそう。まさしく廃墟というような雰囲気が、ゲームのビジュアルとあわせてとても素敵です。