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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#403 『SAD FOREST DRUM』(柿埜嘉奈子/風のクロノア door to phantomile/PS)

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ナムコがおくる3Dアクション・風のクロノアより、柿埜嘉奈子作曲、

『SAD FOREST DRUM』。ビジョン2-1の木の村フォーロックで流れます。

夢の世界ファントマイルを舞台に、黒き旅人クロノアが相棒の精霊ヒューポーとともに冒険の旅に出る風のクロノアシリーズ。その記念すべき第1作目にあたる本作は、2Dの横スクロールを基調としつつ、グラフィックは奥行きのある3Dで描かれるアクションゲームである。作中ではファントマイル語と呼ばれる独自の言語体系が存在し、幻想的な世界観に沿った、シンプルながらも味わい深いゲーム性が特徴となっている。後にWiiでリメイク版が発売された。

本作の音楽を担当するのは井村絵里子氏や柿埜嘉奈子氏をはじめとする、当時ナムコに所属していた複数の作曲家たち。総勢九名という大人数でありながら、全体的に非常に均整のとれた統一感のあるサウンドが揃っている。夢の世界というファンタジックな設定に合わせて、温かみのある民族音楽調の楽曲が多く、変拍子を用いたり、ステージ(本作ではもっぱらビジョンという呼び方だが)ギミックに応じた音楽的工夫が凝らされていたりするなど、遊び心に満ちた仕上がりとなっている。サウンドトラックは未使用曲などのボーナストラックを含めて収録されている。

木の村フォーロックはビジョン2-1とビジョン3-1で二度訪れることになるが、「枯れゆく森の奥で」というサブタイトルを冠する前者で流れるのがこの曲である。後者の「よみがえる森」では同じく柿埜氏が作曲した『FORLOCK TWIST』が流れ、そちらは陽気なリズムが小気味いい愉快な一曲であるのに対し、この曲はどことなく切なさ薫るミステリアスな一曲である。くすんだ色合いの枯れ木を表現するかのごとく、太鼓と木琴が奏でる伴奏の上を、透き通るような笛の音が寂寥感たっぷりに走り抜け、寂しげでありながら温もりあふれる音使いが、聴く者を夢見心地にしてくれる。なお、ステージ中に大木の内部に入り込むと、音がこもり、主旋律の笛が強調されるというこだわりも見受けられる。

『FORLOCK TWIST』もあわせてどうぞ。

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