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隔週末の作曲家談議 vol.004:工藤吉三

作曲家について語るコラムです。

vol.004で扱うのは、ベイシスケイプの工藤吉三(くどう・よしみ)氏。

代表作は「怒首領蜂」「電波人間のRPG」「キャラバンストーリーズ」など。

なお、記事に記載された内容はすべて2019年2月16日現在のものです。

まずは一曲。

www.youtube.com『Assault of Brave Flame』(グランナイツヒストリー/PSP/2011年)

ヴァニラウェアがおくるデータ同期型オンラインファンタジーRPG「グランナイツヒストリー」において、物語終盤の通常戦闘で流れるこの曲は、バイオリンやトランペットが織り成すシンフォニックサウンドに、エレキギターによる力強いメタルテイストを付与した高密度のロックナンバーである。最初から最後まで出し惜しみも中弛みもしない怒涛の展開が特徴で、およそ通常戦闘曲とは思えないほどの重厚な音使いは、オーケストラやビッグバンドでの作編曲に精通している氏ならではの大胆さが如実に表現されている。

工藤吉三氏、1983年生まれ、埼玉県出身の作曲家。得意楽器はエレキギター。中学時代からバンド活動を始め、ヴィジュアル系プログレッシブメタル、ビッグバンドなど、様々なジャンルでの演奏経験を持つ。崎元仁氏率いる音楽制作会社ベイシスケイプに所属している。2007年にセガの「ギャラクシーフォースII」および「アフターバーナーII」の携帯向けの移植版において、同じく当時ベイシスケイプの新人だった千葉梓氏とともにマニピュレーターとして参加したのが初仕事である。コンポーザーとしてのデビュー作は、エヌケーシステムのSFスカイアドベンチャートリノホシ ~Aerial Planet~」(2008年)であり、初音ミクがボーカルを務める、本編未使用のイメージソングを手がけた。その後、ケイブのアーケード用縦スクロール弾幕シューティング「怒首領蜂大復活」(2008年)にて、圧倒的な高難度で知られる首領蜂怒首領蜂シリーズに見合った硬派なサウンドを提供する。初期の工藤氏の担当作のなかで、とりわけ鮮烈な印象を放っているのはヴァニラウェアの絢爛絵巻和風アクションRPG朧村正」(2009年)である。

www.youtube.com抜山蓋世』(朧村正Wii/2009年)

朧村正」では並木学氏を除くベイシスケイプのメンバー七名が総出で作曲を担当している。そうしたなかで、第四章のボス戦で流れるこの曲は、他の精鋭たちが手がけた楽曲に引けを取らぬ雅やかな和ロックとなっている。尺八や三味線といった和楽器の艶やかな音色に、激しく吠え猛るギターとドラムを組み合わせることで、曲名にある四字熟語が意味する通りの威勢の良さを誇る。なお、工藤氏は同作でのDLCの追加曲の作曲も担っていて、そちらも抜群の出来栄えである。

2010年には前述の「怒首領蜂大復活」のバージョンアップ版にあたる「怒首領蜂大復活ブラックレーベル」にて、旧作の音楽がすべて一新されたことを受けて新曲をいくつか手がけている。旧作ではラスボス戦の曲(『ロンゲーナカンタータ』)を担当していたが、ブラックレーベルではそれに代わって真ラスボス戦の曲を担当することになり、出現条件の厳しさや鬼畜すぎる強さを象徴するかのような楽曲を生み出した。

www.youtube.com『Mercilessness』(怒首領蜂大復活ブラックレーベル/AC/2010年)

くだんの真ラスボス戦で流れるこの曲は、まさしく「無慈悲」ということばがすべてを語り尽くしている一曲である。油断も隙もないほどぎゅうぎゅうに詰め込まれた音は、その一音一音に深い絶望が滲んでいて、聴く者をたちまち怖気づかせてしまう。容赦のない轟音の嵐が傍若無人に襲いかかってくるさまは、常人のテクニックでは回避不可能な弾幕地獄を思わせる。

同じく2010年にはコナミの美少女3Dアクション「武装神姫 BATTLE MASTERS」にて作曲を手がけ、ロボットものにふさわしい近未来的なエレクトロニックサウンドをつくり出す。その一方で、ジニアス・ソノリティDS文学全集シリーズの「大人の恋愛小説 DSハーレクインセレクション」(2010年)にも携わり、甘美な読書タイムを彩るイージーリスニング系のしっとりとしたサウンドを作曲した。この他、編曲の方面では15年ぶりのリメイクである「タクティクスオウガ 運命の輪」(2010年)にて、崎元氏の個性的な原曲を氏の表現力豊かな感性でアレンジしたことで知られる。2011年にはヴァニラウェアの「グランナイツヒストリー」にて、作曲・編曲ともに高い完成度を誇るサウンドを生み出した。

ベイシスケイプが10周年を迎えた2012年、工藤氏は千葉氏や金田充弘氏とともに社内バンド「リブストロー」を結成する。工藤氏は同バンドのリーダーであり、担当楽器はギターである(千葉氏はキーボード・シンセサイザー、金田氏はライブミキサー)。ゲーム音楽関連のイベントやフェスでのライブパフォーマンスをおこなっていて、現在も鋭意活動中である。

また、同じく2012年にはジニアス・ソノリティの新感覚RPG電波人間のRPG」で、他のメンバーと一緒に作曲を務める。同作は3DSのダウンロード専用タイトルであるが、いずれの楽曲も手堅いクオリティでまとまっている。続編の「電波人間のRPG2」(2012年)、「電波人間のRPG3」(2013年)、「電波人間のRPG FREE!」(2014年)でも引き続き作曲をおこなっている。2013年にはコナミの「GITADORA」にてシャープなギターサウンドを一曲提供し、音楽ゲームへの参戦を果たす。以降、ギタドラシリーズでは定期的に新曲を書き下ろしている。

www.youtube.com『戦場のタクトシュトック』(GITADORA/AC/2013年)

『クリムゾンゲイト』とともにギタドラに収録されたこの曲は、氏が得意とするシンフォニックロックの作風が存分に活かされた一曲である。情熱的な泣きメロを奏でるエレキギターを、ピアノやコーラス、ストリングスの伴奏が色鮮やかに彩り、息もつかせぬ速度で次から次へと押し寄せるメロディーラインは、小細工なしの格好良さを誇る。ちなみにこの曲は氏にとって初めて音ゲーの発注をもらって制作した曲として、特別な思い入れがあるという。

同じく2013年にはスマホゲームの本格的な台頭に伴って工藤氏もアプリでの作曲を手がけることとなる。エイミングの「幻塔戦記 グリフォン」(2013年)では千葉氏と共作で作曲と編曲を、スクエニの「FINAL FANTASY Record Keeper」(2014年)では一曲のみ編曲を担当し、サクセスの「メタルサーガ ~荒野の方舟~」(2015年、サービス終了済み)ではディレクターおよびコンポーザーとして全曲を単独で作曲する。

工藤氏の音楽を語るうえで欠かせないのは、モスの一騎当千式シューティング「雷電V」(2016年)における活躍である。ベイシスケイプの仲間とともに作曲することが多い氏であるが、同作では前述のメタルサーガ同様にディレクションと作曲を一人でこなしていて、氏の実力が遺憾なく発揮された仕上がりとなっている。

www.youtube.com『Unknown Pollution』(雷電V/XOne/2016年)

雷電シリーズと言えば佐藤豪氏や佐藤亜希羅氏が長らく作曲してきたが、今回はシリーズ初参加となる工藤氏が単独で手がけるようになったため、サウンドの方向性ががらっと変わった。そうした実験的な試みが大成功をおさめたことを印象付けてくれるのが、1面道中で流れるこの曲である。ゲーム内におけるステージ展開とシンクロした曲調が魅力で、勇ましく華やかなオーケストラとロックが融合することで、シューティングゲームにふさわしいスペースオペラ的な爽快感を演出する。同作ではこの曲以外にも氏の真骨頂とも言うべきサウンドが勢揃いしていて、氏の世界観にとことんまで酔いしれることができる。

もう一つ、工藤氏およびベイシスケイプにとって近頃重要な作品として位置づけられているのがエイミングのスマホ向けファンタジーRPG『CARAVAN STORIES』(2017年)である。同作は崎元氏を除くベイシスケイプのメンバーが一丸となって参加している作品であり、サウンドトラックは現在までにすでに8枚も発売されているなど、音楽に対する並々ならぬ力の入れようが窺える。そんななか、工藤氏はサウンドを総括するディレクターであると同時に、コンポーザーとしてもメインテーマや戦闘曲など幅広く作曲している。

www.youtube.com『キャラバンと征く』(CARAVAN STORIES/iOS・And/2017年)

同作のタイトル画面で流れるこの曲は、バリバリのロックサウンドというイメージが強い工藤氏の作曲のなかでは驚くほど穏やかでのどかなピアノ主体の一曲である。「ファンタジーを音楽で表現することはプレイヤーを音で現実から連れ出すこと」と氏自らが語るように、この曲の優しい音使いは、現実とは異なる次元で繰り広げられる温もりあふれる日常を丁寧に描き出している。なお、この曲は同作の顔でもあるため、イベントごとに頻繁にアレンジされている。

作曲家デビューから10年が経ち、ベイシスケイプのメンバーとしての歴も長くなってきた工藤氏。常に音楽研究に余念のない姿勢が印象的で、今後の活躍がますます期待される。

 

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遅くなりましたが滑り込みで今日中に間に合いました。工藤さんの持ち味はやっぱりロック!という感じですが、それ以外のジャンルも聴き応えがあって良いですね。参考までに、今まで格納した工藤さんの楽曲をどうぞ。