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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を一日一曲を目安に紹介します。

隔週末の作曲家談議 vol.012:並木学

作曲家について語るコラムです。

vol.012で扱うのは並木学(なみき・まなぶ)氏。

代表作は「バトルガレッガ」「怒首領蜂」「虫姫さま」など。

なお、記事に記載された内容はすべて2019年6月8日現在のものです。

まずは一曲。

www.youtube.com『「あの未来に続く為」だけ、の戦いだった』(怒首領蜂大復活/AC/2008年)

一度は完結したはずの怒首領蜂シリーズの復活作として登場した同作のなかでも、最終面にあたる5面道中で流れるのが、この言わずと知れた並木氏の代表曲である。ステージの鬼畜さとは裏腹に、非常にクールでスタイリッシュなテクノサウンドとなっていて、弾けるように煌びやかな音使いのなかに潜む一抹の哀愁が、クライマックスにふさわしいカタルシスを生む。この曲のサビでは、並木氏にとって初めて怒首領蜂シリーズに携わった大往生の記念すべき1面『東亞』のフレーズを一部借用していて、氏の集大成とも言うべき仕上がりとなっている。

並木学氏、1971年生まれ、千葉県出身の作曲家。さんたるるという別名義兼愛称でも知られる。得意楽器はギター。初めは作曲家としてではなくアルュメにてグラフィックの仕事をしていたが、直後の1992年にNMKに移籍し、作曲家としてのキャリアを本格化させる。デビュー作はおそらく翌年に稼働開始したアーケード用アクション「ボンジャックツイン」かシューティング「サンダードラゴン2」(いずれも1993年)で、ともにシリーズものの続編ながら氏が全曲単独で作曲している。とりわけ後者は、後にシューティングゲームにその人ありとまで称されるようになる並木氏にとって、STGというジャンルに関わる第一歩であったと言っても過言ではない。

www.youtube.com『Fly To Live I』(サンダードラゴン2/AC/1993年)

同作の1面、8面、さらにはスタッフロールでも流れるこの曲は、まさしく並木氏の伝説の始まりとも言うべきエポックメイキングな一曲である。同作における道中曲は大まかに分けると2曲しかないが、そこから派生したアレンジ曲がそれぞれ2曲ずつあり、合計で6曲用意されている。そのなかでもこの曲は、全8面構成であるがゆえに、1面と8面という最初と最後のいいとこどりをしていて、メインテーマとしての立ち位置を占めている。爽やかであり、切なくもあり、激しくもあり、美しくもあるその旋律は、すでに氏の持ち味をものの見事に凝縮していて、後に生まれ出づる名曲たちの原点となっている。

その後もNMKが手がけるアーケード作品にて作曲を続ける氏であったが、「作戦名ラグナロク(1994年)湾岸戦争(1995年)といったシューティング以外に、「クイズぱにくるふぁんたじー」(1993年)アメリカ横断ウルトラクイズ4」(1993年、上記作品群のなかでは唯一アーケードではなくゲームボーイ向けの作品)といったクイズゲームにも楽曲を提供する。「湾岸戦争」を最後にNMKがビデオゲーム事業から撤退すると、それに伴って並木氏も同社から離れ、新たにSTGを主力とするライジングに入社する。ライジングに入って初めて担当したのはバトルガレッガ(1996年)であり、同作は熾烈なランクシステム(プレイヤーの腕次第で難易度が調整される)と、熾烈さを吹き飛ばすほどノリの良い音楽が何よりの特徴である。その凶悪なゲームバランスとともに並木氏の名をあらためて歴戦のシューターたちに知らしめた作品となっている。

www.youtube.com『Stab and Stomp!』(バトルガレッガ/AC/1996年)

1面をはじめ、複数のステージのボス戦において流れるこの曲は、破壊的で暴力的な勢いが魅力のハードコアテクノ調の一曲である。同作はデトロイトテクノドラムンベース、インダストリアル、ガバ、その他隣接ジャンルの楽曲が多く詰め込まれていることで知られ、STGサウンドに革命をもたらすほどの強いインパクトを引っ提げてシューターたちを魅了してきたが、そのなかでもこの曲は、音源の制約ゆえに音に厚みが出しにくい状況下で、恐ろしいほど完璧に、重厚な響きを生み出すことに成功している。曲名は直訳すると「突き刺せ、踏みにじれ!」という具合になり、蹂躙している(あるいはされている)感覚がひしひしと伝わってくる。

同作で鮮烈なデビューを果たした後、1997年には3D格闘ゲームブラッディロア、1998年にはバトルガレッガの精神的後継作に相当する「アームドポリス バトライダー」にて、岩田匡治氏や崎元仁氏ら数人の作曲家とともに作曲を務める。前者は後にシリーズ化され、並木氏はブラッディロア2」(1998年)まで作曲の一部を務めることになる。また、後者はゲストキャラクターとして過去のライジング製シューティングの自機や敵機が登場するお祭りゲー的な側面もあり、そうした経緯もあってか複数の作曲家が一同に会することとなった。

2000年にライジングがエイティングに吸収合併され、事実上解散すると、並木氏も一時期フリーランスになり、作曲家として新たな道を模索することになる。そうしたなかで、2002年には岩田氏と崎元氏とともに音楽制作を専門に請け負う会社・ベイシスケイプを設立する。こうしてメーカーやジャンルを問わず様々な作品に携わる機会を得た並木氏は、とはいえ何かと縁のあるシューティングで引き続き活躍することになる。ケイブ怒首領蜂大往生(2002年)ケツイ~絆地獄たち~」(2003年)がその好例であり、並木氏のネームバリューも相まっていずれも絶大な支持を誇る仕上がりとなっている。後者は徐々に軟化傾向にあるケイブの作品のなかでもとりわけミリタリー色の強い硬派な縦スクロールシューティングで、絶対に生きて帰れない任務に志願した青年たちの決意と絆の物語を描いている。

www.youtube.com『EVAC INDUSTRY - 審判の日』(ケツイ~絆地獄たち~/AC/2003年)

良曲揃いの同作のなかでも屈指の名曲として名高いこの曲は、最終面である5面道中で流れる一曲である。圧倒的な爽快感や疾走感を重視するというSTGサウンド固定観念から逸脱する静謐さが印象的で、終始落ち着いた無機質な曲調でありながらも、無意識のうちに内側からじわじわと闘志がみなぎってくるような情熱にあふれている。プレイ中絶え間なく響き渡る爆撃の効果音とともに、来るべき審判の日、避けられ得ぬ死に向けて全力疾走する青年たちの様子を生き生きと表現している。

同作以降、ケイブは萌えを意識した作品づくりに没頭するようになるが、氏はそうした路線の転換にもしっかり対応して幅広い楽曲を生み出すことになる。虫姫さま(2004年)エスプガルーダII」(2005年)デススマイルズ(2007年)など、ミステリアスだったりファンタジックだったりゴシックホラーだったりするそれぞれの世界観に見合った良質なサウンドを提供する。氏曰く「シューティングの音楽は特殊」であり、多様な世界観のなかでも、何よりもまず「シューティングのBGMであること」を意識して曲づくりに励んでいるそうである。そのため、作品ごとに多少毛色は違っても、氏の作風そのものは常にぶれることのない確固たる軸を持っているように感じられる。

シューティング以外では、M2のGBA向け経営シム「デ・キ・キャラット でじこミュニケーション(2003年)やその続編でじこミュニケーション2 打倒!ブラックゲマゲマ団」(2004年)といったキュートでコミカルな作品の作曲を手がける。また、ベイシスケイプのメンバーとともに人気漫画を原作とする格闘ゲームBLEACH ~ヒート・ザ・ソウル~」(2005年)およびそのシリーズ作にも携わり、キャラゲーらしく、原作のイメージを損なうことなく、むしろ深化させるようなスタイリッシュなポップサウンドを生み出す。2007年にはCS版のbeatmania IIDX 13 DistorteD」にて一曲提供し、音楽ゲームデビューを果たす。さらに翌年、医療をテーマとしたアトラスによるドラマチック手術アクション救急救命 カドゥケウス2(2008年)にて、並木氏と上倉紀行氏(同じくベイシスケイプの作曲家)とともに緊張感あふれる手術サウンドをつくり出す。これらと並行して、もちろんシューティングの作曲にも積極的に携わり、ベイシスケイプの初期メンバーとして、徐々に人数が増えつつあるチームを引っ張り続けた。

そして2011年には約8年ほどの在籍期間を経てベイシスケイプを退社し、その翌年に縁のあるM2に移籍した。M2は独自のエミュレーション技術を用いたレトロゲーム移植に強い会社であるため、並木氏も主に音源解析や移植に伴う追加曲などを制作することになる。この一連の移籍の時期と前後して、氏はグレフの全方位シューティング「哭牙 KOKUGA」(2012年)の作曲を担う。同作は一度に撃てる弾は一つのみ、敵をしっかりと狙って撃つことに焦点が当てられていて、一発の重みに一喜一憂するゲーム性となっている。そうした渋いゲーム性にあわせて、壮大なオーケストラサウンドが取り揃えられていて、エレクトロニックとアコースティックな魅力が融合した仕上がりとなっている。

www.youtube.com『哭牙』(哭牙 KOKUGA/3DS/2012年)

ゲーム名をそっくりそのまま冠したこの曲は、同作で流れるテーマ曲の一つである。同作は決められた順番でステージを攻略するのではなく、ピラミッド型に配置されたルート選択画面のうち、プレイヤーが任意に選んだ地点からゲームを開始し、クリアするたびに隣接ブロックに移動できる仕組みになっている(最短で2面でエンディングを迎えられる)。そのため、ステージごとに固有の曲が用意されているわけではなく、道中の進路を塞ぐゲートキーパーと呼ばれる存在を撃破することでBGMが切り替わる方式を採用している。特定の場面と密に結びついていないからこそ、この曲の持つ悲愴感は、どんな場面でも通用し得る汎用性を備えていて、臨場感と没入感たっぷりにスリリングな攻防を彩ってくれる。

M2において氏は作曲家としてのみならず、ゲームデザイナーとして完全オリジナルタイトル「アホ毛ちゃんばら」(2013年)ディレクションを務め、クリエイターとしてのマルチな才能を発揮する。新規の作曲を務めることはすくなくなるが、セガ3D復刻アーカイブス(2014年)などの移植プロジェクトに際して、タイトルやメニュー画面といった、かゆいところに手が届くような細かな作曲をするようになる。2017年にはM2を退社し、今度はソーシャルゲームの受託開発を主に手がけるグリッド株式会社に移籍する。

2018年には久々にコンポーザーとしてケイブの新作アプリ「三極ジャスティス」(サービス終了済み)にて、同社の松本大輔氏や宮本武氏とともに作曲をおこなう。同作はライフサイエンスが解禁されたことを受けて混迷を極める2040年の日本を舞台に、三つの異なる正義がぶつかり合って展開する戦春ストラテジーゲームであり、近未来的でありながらレトロ感あふれる独特な世界観に見合った情緒豊かなサウンドが取り揃えられている。

www.youtube.com『三つの銃口』(三極ジャスティス/iOS・And/2018年)

同作のタイトル画面で流れるこの曲は、ピアノの流麗な音色が印象的な一曲である。おなじみのテクノサウンドとは一線を画する、優しく柔らかく物憂げな、氏のことばを借りれば「詩的」な音使いが特徴で、1ループ50秒ほどの短さのなかに、今まで氏が描いてこなかった新たな音楽性が見て取れる。構想段階では曲の最後に銃声をかぶせていたとのことであり、最終的には実現しなかったものの、十分想像し得るような余韻が残されている。

グリッドに移籍した後の動向には今後ますます注目が集まるなか、氏はシューティングゲーム界隈きっての作曲家として、これからもさらなる活躍に期待がかかる。数多くのシューターたちを魅了してきた氏のサウンドが、この先いかなる進化を遂げていくのか、楽しみである。

 

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だいぶシューティングに的を絞って紹介したので割愛した部分も多いですが、とりあえず概ね書きたかったことは書けたような気がします。参考までに、今まで格納してきた並木さんの楽曲をどうぞ(こっちもシューティングだらけです)。