VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#527 『Tengurila』(大久保高嶺・中潟憲雄/暴れん坊天狗/FC)

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ライブプランニングがおくる横スクロールシューティング・暴れん坊天狗より、

大久保高嶺・中潟憲雄作曲、『Tengurila』。ROUND 1の前半で流れます。

邪悪な生命体の侵略により生き地獄と化したアメリカを舞台に、突如日本から飛来した天狗の面が人々の祈りに応えて世界を救う、という内容の本作。破壊力抜群の破天荒な設定と、その期待を裏切らない怪奇的なグラフィックとが何よりの特徴で、いろいろおかしい世界観とは裏腹に、純粋なシューティングゲームとしての完成度は高く、建物を破壊しながら突き進む爽快感たっぷりのゲーム性が魅力である。摩天楼を颯爽と駆け、ビルを炎上させ、自由の女神を屠るその痛快さ極まるカオスぶりから、ファミコン屈指の怪作として未だに語り草になっている。

本作の音楽を担当するのは大久保高嶺氏と中潟憲雄氏。中潟氏は当時ライブプランニングに所属していて、大久保氏は彼のもとでアルバイトをしていた。両名とも本作では音楽だけでなく、大久保氏は企画原案とデザインを、中潟氏はディレクションをも手がけたことから、開発の中心メンバーだったと言える。そうした経緯からか、本作の奇想天外な世界観にこれ以上ないほど精通している彼らのつくる楽曲は、いずれも本作ならではの奇妙だけど格好良い、チャレンジ精神に満ちた作風を体現している。長らくサウンドトラックは発売されてこなかったが、2013年にクラリスディスクよりサントラ化が果たされた。

全5面構成のうち、ROUND 1の前半で流れるのがこの曲である。ラスボスの5面以外は好きな順番で攻略できるため、必ずしも最初のステージであるとは限らないが、手始めにここから挑んだプレイヤーも多いだろう。ニューヨークの高層ビルが立ち並び、いかにも大都会らしい風情が漂うなかで流れるこの曲は、どことなく不安を駆り立てるような不気味で不協和な響きがあるものの、それと同時に非常に勇ましく凛々しげな雰囲気を醸し出している。自由自在に低音から高音まで行き来することで、夜景を背に縦横無尽に暴れ回る天狗の面の姿をありありと描き出していて、さらにその曲名のネーミングセンスが、末恐ろしいほど完璧に、本作のエキサイテングな世界観を表現している。

ROUND 1の後半は『Exodus』、いくらか落ち着きのある一曲ですが、世紀末感が滲み出ていてなかなか素敵です。あわせてどうぞ。

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