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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を一日一曲を目安に紹介します。

#547 『Tristram』(Matt Uelmen/Diablo/PC)

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Blizzard EntertainmentがおくるアクションRPGDiabloより、

Matt Uelmen作曲、『Tristram』。トリストラムの町で流れます。

インターネットを通じてマルチプレイを楽しめるMORPGの先駆けとして登場した本作。天使と悪魔の戦争により荒廃した人間界を舞台に、プレイヤーはトリストラムの町に集った冒険者として、地下迷宮に潜む魔王ディアブロを打ち倒すことになる。当時としては非常にエポックメイキングだった通信プレイはもちろん、さながらローグライクのようにランダムに生成されるダンジョンや、ターン制ではないリアルタイムなハック&スラッシュ的な戦闘システムなど、意欲的な要素を数多く取り入れているのが特徴で、世界中のプレイヤーとときに協力し合ったり、ときに戦いを求めて(あるいは相手の装備品目当てで)PKを挑んだりできるなど、今でも通用するようなオンラインゲームの礎を築き上げた伝説的な仕上がりとなっている。原作のPC版は日本語未対応だが、PS向けの移植版はオンライン未実装だが完全日本語化されている。

本作の音楽を担当するのはMatthew Francis "Matt" Uelmen氏。当時Blizzard North(Blizzard Entertainmentの開発子会社)に所属していたアメリカ出身の作曲家である。氏は本作発売の2年前に活動を始めたばかりの新人だったが、本作および後に登場する続編において全曲単独で作曲を任されていて、Diabloサウンドの基礎をつくり上げるに至った。本作では悪魔が蔓延るダークファンタジー調の世界観にあわせて、冒険心とともに恐怖心を煽るような退廃的な楽曲が取り揃えられている。サウンドトラックは長らく発売されてこなかったが、15周年を記念して2011年のBlizzCon(Blizzard社の自社イベント)で初めて発売され、現在はダウンロード販売されている。

本作および本シリーズの代表曲といっても過言ではないこの曲は、冒険の拠点となるトリストラムの町で流れる一曲である。間断なく奏でられる素朴なアコースティックギターの旋律が、ざわざわと擦れ合うように響くことで、一瞬にして強い郷愁の念を呼び起こしてくれる。どこか気分が晴れない靉靆たる雰囲気を醸す主旋律に、沈鬱な色合いを帯びたストリングスの伴奏が加わると、ノスタルジックでありながら安心とは程遠い不安感が芽生えていく。時折挿入されるオカリナらしき透明な笛の音が、途方もない寂寥感を漂わせ、心が落ち着くようで落ち着かないような、アンビバレントな感覚を生じさせる。まさにDiabloの世界を丸ごと鏡で映したような、没入感たっぷりの一曲である。

一見穏やかだけど、聴けば聴くほど不穏になっていく感じが絶妙ですね。そんなに古くはないですが、個人的にはゲーム音楽の古典の一つに数えたいです。ちなみに3ではRussell Brower氏らによってアレンジされた『New Tristram』というのがあって、そちらもニューなのにやはり耐え難くノスタルジックです。あわせてどうぞ。

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