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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を一日一曲を目安に紹介します。

隔週末の作曲家談議 vol.016:安井洋介

作曲家について語るコラムです。

vol.016で扱うのは安井洋介(やすい・ようすけ)氏。

代表作は「まものろ」「エスカトス」「ギンガフォース」など。

なお、記事に記載されている内容はすべて2019年8月3日現在のものです。

まずは一曲。

www.youtube.comPOINT OF NO RETURN』(ESCHATOS/X360/2011年)

同作が80年代シューティングの雰囲気を現代に蘇らせるにあたって、氏の楽曲がどれほど多大な貢献をしたかは言うまでもない。この曲は12面から15面にかけて流れる道中曲であり、全26面からなる同作のちょうど折り返し地点にあたるが、その悲愴感あふれるレトロチューンは、帰還不能(航空用語でもはや飛行機が出発点に戻る燃料が尽きる点、シューティングなら飛行機を自機に置き換えるといいだろう)を意味する曲名含め、中盤の盛り上がりの一番おいしいところを鮮やかに表現している。空想科学的な格好良さを追求する飽くなき情熱を、一つ一つの音の隅々にまでぎゅっと凝縮したような仕上がりとなっている。

安井洋介氏、1976年生まれ、神奈川県出身の作曲家。幼少の頃からゲームに親しみ、プログラミングや音楽制作など、ものづくりに幅広く興味を抱く。ゲーム音楽では特にナムコサウンドに強い感銘を受け、次第に本格的にサウンドクリエイターを目指すことになる。専門学校を経て、2000年に音楽制作会社スーパースィープに入社。同社は細江慎治氏と佐宗綾子氏により2000年2月に設立されたばかりだったため、氏は初期メンバーとして活躍することになる。なお、細江氏と佐宗氏は以前はアリカのサウンドチームに所属していて、さらにその前はナムコに在籍していたことから、安井氏は少年時代に聞き惚れた元ナムコのベテラン作曲家に囲まれながら、自らも研鑽を積むこととなる。

スーパースィープの初仕事(かつ、おそらく安井氏にとってのデビュー作)は、小森陽一氏による個人制作のフリーゲームProdigy Racing」(2000年)であり、安井氏はここで細江氏とともに近未来風高速カーレースゲームにふさわしいシャープなテクノサウンドを生み出す。続いて今度はコンシューマー向けの作品として、以前から細江氏らが携わってきたカスタムロボシリーズの新作カスタムロボV2(2000年)にて、安井氏も加わって四人体制でサウンドを担当することになる。2001年にはアリカのリズムアクションゲーム「テクニクティクス」にて、これまたチーム一丸となって楽曲を提供し、音ゲーの要たる音楽をつくり出す。同作にはスーパースィープ以外にも、細江氏と佐宗氏のナムコ・アリカ時代の同僚である相原隆行氏や、フリーランスの齋藤博人氏なども参加していて、いずれの楽曲も高いクオリティでまとまっている。

www.youtube.com『Broken Shackles』(テクニクティクス/PS2/2001年)

DRUM'N BASSのジャンルのもとに収録されているこの曲は、全編テクノで統一されている同作のなかでも特にドラムの複雑な響きが印象的な一曲である。出だしの部分など、時折ささやくような調子で挿入されるボイスが、硬派なパーカッションとは裏腹に甘く柔らかな空気感を演出し、そこにシンセサイザーの浮遊感あふれる音色が加わることで、独特のトリップ感を醸し出している。もともとスーパースィープのメンバーはテクノが得意だが、この時点ですでに安井氏もその一員として堂々と肩を並べるほどの実力を有していたことが窺える。

続編のテクニクビート(2002年)でも安井氏は他のメンバーと一緒に参加し、同作ではオリジナル曲以外にアリカやナムコ製ゲームの過去曲が大量に追加されたため、氏はそうした名曲群をアレンジする機会に恵まれた。その他、時期を前後してバンダイによるリアルタイムシミュレーションガンダムバトルオンライン」(2001年)、アリカのダイビングアドベンチャーエバーブルー」(2001年)およびエバーブルー2」(2002年)などを担当していき、順調にキャリアを積んでいく。比較的大きめなタイトルで言えば、2003年にロックマンエグゼ トランスミッションNARUTO -ナルト- 激闘忍者大戦!」を細江氏と佐宗氏とともに作曲したことが挙げられ、このうち激闘忍者大戦シリーズは新作が出るたびに軒並み新曲を提供することになる。漫画繋がりでは金色のガッシュベル!! 友情タッグバトル」(2004年)および続編の「2」(2005年)、さらには「ゴー!ゴー!魔物ファイト!!」(2005年)にも参加し、キャラクターゲームにふさわしい音楽づくりの在り方を模索する。

2006年にはアートディンクによる思考設計型ロボット対戦シミュレーションカルネージハート ポータブル」にて、それまでのシリーズサウンドを手がけてきたアートディンクの仁志田竜司氏とともに、主に戦闘曲関連を作曲することになる。同作は7年ぶりの続編であり、プレイヤー自身がロボットのプログラムを組むという代替不能な独自性を放つ作品であるため、シリーズファンにとっては待望の新作と言えるが、安井氏も学生時代にシリーズをプレイしたことがあるらしく、その経験を活かして、シリーズ初参加ながらも見事に世界観を反映した曲を生み出すことに成功する。

www.youtube.com『Cold hands, warm heart』(カルネージハート ポータブル/PSP/2006年)

戦闘をシミュレーションすることが肝である同作では、そのコンセプトにあわせて戦闘曲の数がかなり充実しているが、そのうちの一つがこの曲である。ミニマルテクノにデジロックを組み合わせた疾走感あふれるエレクトロニックサウンドが特徴で、爽やかなストリングス、伸びやかな電子音、強かなパーカッション、そのすべてを一つに溶け込ませることで、思わず身震いせんばかりの昂揚感と恍惚感を漂わせている。音そのものは無機質で冷涼な響きを帯びているが、聴けば聴くほど身体の奥底から熱い感情が沸き立ってくるような、冷静と情熱のハイブリッドとも言うべき仕上がりになっている。

2007年にはIEインスティテュートの英語トレーニングソフト「NEW英単語ターゲット1900DS」を手がけ、安井氏の作曲したもののなかにはPSG音源を駆使した本格的なチップチューンなどもある。アーケード作品にも活動のフィールドを広げ、オンライントレーディングカードゲーム「LORD of VERMILLION」(2008年)で複数人で効果音制作に携わったのち、今度は効果音・楽曲ともに安井氏単独でグレフとガルチの呪われアクションシューティングまもるクンは呪われてしまった!(2008年)を担当する。同作は安井氏の知名度をシューターたちの間で一気に向上させた作品と言っても過言ではなく、FM音源入り混じるオールドスクール・レトロサウンドの宝庫となっている。

www.youtube.com『YO-KAI Disco』(まもるクンは呪われてしまった!/AC/2008年)

冥界入口のステージで流れるこの曲は、数ある氏の楽曲のなかでも屈指の人気を誇る一曲である。呪いや冥界といったおどろおどろしいキーワードとは裏腹に、同作はポップでキュートな世界観で統一されていて、可愛らしいグラフィックとともにその印象をさらに強めてくれるのが、明るくノリノリなサウンドである。お祭り騒ぎのように賑やかで楽しげな和風のメロディーラインと、どことなくノスタルジーを喚起させる昔懐かしい音使いとが相まって、清々しいほど前向きに、感傷に浸ることなく純粋に童心を思い出させてくれる。シューティングの面白さ、ゲームの面白さが余すことなく表現された一曲である。

同作以降も定期的にシューティングの楽曲制作に参加することになる。2009年にはコナミの横スクロールシューティングオトメディウスGの追加DLCの楽曲を担当したほか、2011年には先に触れたキュートの縦スクロールシューティング「ESCHATOS」にも携わり、チップチューンを愛してやまない氏の実力を内外に示す。エスカトスの制作インタビューにて氏は、ゲーム音楽をつくるにあたって重要視する点について、「そのゲームごとに『どういう音にすべきか?』」を意識することであると言い、作曲家として、はたまた開発者として、サウンドのノウハウを活かしつつ効率よくものづくりをしていく大切さを語った。

2012年にはGモードによるサウンドシンクロ型アクション「ドーパミックス」にて、ドーパミンの効果に合致した快感に満ちた癒しのリズムをつくり出す。さらに2013年にはエスカトスの開発スタッフがおくる縦スクロールシューティングギンガフォースで、今度は単独でではなくスーパースィープ一丸となって作曲することになる。同作には以前スーパースィープのメンバーだった渡部恭久氏や、テクニクシリーズでおなじみの斎藤氏なども参加していて、計八名の精鋭が揃っているが、そのなかでも安井氏は収録曲のうちの半数ほどを手がけるメインコンポーザーとして一際存在感を放っている。

www.youtube.com『Aeronaut』(ギンガフォース/X360/2013年)

開始直後の1面で流れるのがこの曲である。プレイヤーは惑星セプンティアの治安を守る警備会社の新人パイロットとして、巷で起きた強盗事件の調査に向かうべく初任務に出動することになるが、そうした期待と不安の入り乱れる心境を、有り余るほどヒロイックな旋律で綺麗に描き出している。本人談で「敵を追いつつ都市部を飛び回る疾走感や力強さをベースに、シューティングの音楽としてのカッコよさも忘れないよう、何度も試行錯誤を重ねて仕上げました」と語るように、STGの爽快感を極限まで引き出したキャッチーなメロディーラインが印象的で、1面道中という同作の音楽の方向性を決定づける立ち位置にある曲として、その役割を見事に全うした一曲である。

同じ年にはスパイシーソフトのワンボタンアクション「チャリ走DX2 ギャラクシー」(2013年)に1曲のみだが楽曲を提供する。前作はスーパースィープの谷口輝雄氏が単独でサウンドを担っていたが、同作および次作「DX3 タイムライダー」(2014年)では谷口氏以外のスーパースィープのメンバーも携わるようになり、宇宙規模であったり時空を越えたりする大冒険を彩るにふさわしい多種多様な音楽をつくり出す。この頃からスマホ向けの作品にも曲を提供するようになり、DeNAのカンタンお料理パズルゲーム「パズるんレストラン」カジュアルゲーム「フライングデブリーズ」(いずれも2014年、サービス終了済み)「彗星のアルナディア」(2016年、同じくサービス終了済み)など、単発タイトルをすくなからず手がける。

ゲームの作曲・効果音制作以外での活躍はそう多くはないが、竹ノ内裕治氏主催のゲ音団(2009年に発足、2011年に解散)に参加していたことがあったり、SweepRecord(スーパースィープの音楽レーベル)のもとで発売されるCDにて数々のアレンジをおこなったりするなど、同業者との交流を大事にしている様子が窺える。元スーパースィープの坂本昌一郎氏率いるsound sepherや、霜月はるか氏、MANYO氏、日山尚氏による音楽ユニット・canoue、チップチューンサークルのFMPSGなど、商業のみならず同人の立場からゲストコンポーザー兼アレンジャーとして参加することもある。

2017年を境にスーパースィープの一員として作品に参加することがなくなり、2019年現在では公式サイトのメンバープロフィールに安井氏の名前がないことから、この二年ほどの間でスーパースィープを離れたものと思われる(※追記:その後の情報で、氏本人がツイッターで明かしたところによると、2017年にスーパースィープを退社し、現在は株式会社flaggsでサウンドとバックオフィスを担当しているとのこと)。直近の担当作として挙げられるのは、Nurijoyによる新感覚リズムアクション「SUPERBEAT XONiC」(リリースは2015年)における追加楽曲であり、同作は海外産のゲームであることを踏まえると、国境を越えて安井氏の楽曲が親しまれていることが分かる。

www.youtube.com『Expressive Air 06』(SUPERBEAT XONiC/PS4・NS・XOne/2017年)

2017年末のホリデーシーズンにあわせて追加されたこの曲は、New Ageのジャンルのもとに収録されている一曲である。何度となく繰り返されるアップテンポでスタイリッシュな音使いは、ミニマルミュージック風でもあればフュージョンらしくもあり、サビのあとに短い間だけながらもエレキギターが入ると、ポップ・ロック的なエッセンスも感じられる。こうしていろいろと詰め込まれているにも関わらず、それぞれの音色が美しく調和することにより、見事な統一感を生み出している。実はこの曲、氏が明かしたところによれば、もともと20年近く前の専門学校時代に課題でつくったもので、それをセルフリミックスして出来上がったそうである。そうした経緯から、時を越えて蘇った氏の新たな代表曲と言えよう。ちなみにゲームに収録されているものはショートアレンジであり、フルサイズは2007年に発売されたアルバム・Nanosweep4におさめられている。

※なお、上記動画の42秒にはゲームの効果音が入っているが、実際の曲にはこの音は存在しない

2000年が安井氏にとってのデビューの年であるならば、もうすぐ晴れて20周年を迎えることになる。音源的な制約がすくない現代だからこそ表現できる最新で最高のレトロサウンドを求めて、そしてもちろんチップチューンに限らず他のジャンルの音楽も含めて、これからも安井氏のさらなる活躍が見込まれる。

 

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細江さんや佐宗さんは時折BEMANIシリーズとかでも楽曲提供をしていますが、管見の限り安井さんは携わっていないようで、いつか参加してくれたらなあと思っています。ノリノリなサウンドで譜面を遊びたいです。参考までに、今まで格納してきた安井さんの楽曲をどうぞ。