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隔週末の作曲家談議 vol.018:小池雅人

作曲家について語るコラムです。

vol.018で扱うのはコーエーテクモゲームスの小池雅人(こいけ・まさと)氏。

代表作は「太閤立志伝」「無双」「ジーワンジョッキー」など。

なお、記事に記載された内容はすべて2019年8月31日現在のものです。

まずは一曲。

www.youtube.com合肥の戦い CYCLONIZED TYPHOON』(真・三國無双7PS3/2013年)

「無双のすべてを超える」という強気な謳い文句で登場した真・三國無双7、そのキャッチコピーを裏切らない出来映えを誇るのが、合肥の戦いで流れるこの曲である。同作では小池氏はサウンドディレクターを務めている都合上、そちらの仕事が忙しく、作曲にはあまり参加できていないが、それでも1曲だけ、一球入魂と言わんばかりにつくりあげたこの曲は、今まで築いてきた無双サウンドのすべてを詰め込み、すべてを凌駕する勢いと迫力に満ちている。氏自身、ギターは演奏できないそうだが、そうしたハンディキャップを台風さながらに吹き飛ばすほど、ドラマティックでドラスティックなギターサウンドが堪能できる仕上がりとなっている。

小池雅人氏、(生年月日の詳細は明らかになっていないが、おそらく1979年か80年頃の生まれと思われる)作曲家。得意楽器は笛。学生時代は専門的な音楽教育を受けず、プロフェッショナルな作曲の経験もなかったが、独学で試行錯誤を重ね、2002年にコーエーに入社する。2003年には同社のタクティカルシミュレーション「三國志戦記2」や恋愛シミュレーションアンジェリーク エトワール」などで効果音の仕事に携わり、研鑽を積む。翌年2004年には、同社の看板シリーズであるタクティカルアクションの真・三國無双シリーズの新たな試みとして、舞台を日本の戦国時代に移した戦国無双にて、その門出を祝福するかのごとく、新人の氏も同じくコーエー所属の志知道彦氏やMASA氏、三澤康広氏らとともに作曲することになる。小池氏の担当曲は限られているが、それまでの中華風から和風のものへ、無双サウンドの新たな方向性が開拓される。和といえばもう一つこの時期に同社のシミュレーション太閤立志伝V」(2004年)の作曲にも参加し、現時点でシリーズ最終作にあたる同作を華やかに彩る。

www.youtube.com『いざ決戦』(太閤立志伝V/PC/2004年)

野戦において流れるこの曲は、和とオーケストラが見事に溶け合った一曲である。同作は太閤立志伝シリーズのなかでも随一の自由度と完成度を誇る一作として、まさに集大成ということばが似合う仕上がりとなっているが、そうした評価を支えている要因の一つが、実り豊かな音楽にある。和楽器の雅やかな旋律に、管弦楽器の格式高い音色が加わることで、閑雅でありつつ壮大でもある独特な雰囲気を演出している。現在も根強く新作を望む声が聞かれる太閤立志伝シリーズの奥深さを、未だに色褪せることなく伝え続ける一曲である。

2004年後半はすでに発売されていた作品の完全版にあたる戦国無双 猛将伝にて追加曲を書き下ろし、テクノやトランス調の挑戦的な作風が好評を博す。翌年、本家シリーズの真・三國無双4(2005年)にて初参加を果たし、複数の作曲家に囲まれながら一部の楽曲を作曲する。なお、完全版の「4 猛将伝(2005年)には不参加となるが、アクションとシミュレーションを組み合わせた「4 Empires」(2006年)では新曲を多く作曲する。

www.youtube.com『MEMORIES』(真・三國無双4PS2/2005年)

史実を読み解く三國志事典および武将事典モードで流れるこの曲は、派手なハードロック調の楽曲が多い無双サウンドのなかでは異彩を放つ、穏やかな一曲である。前作では当時コーエーに所属していた横田真人氏が事典の曲を担当したが、本作以降、真・三國無双でも後のOROCHIシリーズでも、小池氏が一貫して作曲するようになり、その存在感と実力を内外に知らしめることになる。無双サウンドの要たる熱いギターサウンドだけでなく、歴史の重みと時代の流れを感じさせるような、儚くも美しいノスタルジックな曲調をも得意とする氏の手腕が遺憾なく発揮された一曲である。

その後も引き続き無双シリーズを中心に手がけていき、戦国無双2」「雀・三國無双」「真・三國無双BB(いずれも2006年)など、外伝作含め幅広く作曲する。「戦国無双2」を最後に、無双サウンドを牽引してきた志知氏と三澤氏がコーエーを離れると、いよいよ世代交代が本格化し、2005年に入社してきた稲毛謙介氏や山田玄紀氏らの新顔とともに、小池氏は次世代の無双サウンドを担うことになる。戦国無双シリーズには2以降不参加となるが、かわりにシリーズの10周年を記念して新登場した三國と戦国のクロスオーバー作品無双OROCHI(2007年)にてメインコンポーザーを務める。

www.youtube.com『SAMURAI SCANNERS』(無双OROCHIPS2/2007年)

真・三國無双戦国無双、日中の英雄たちが一堂に会する同作において、基本的に収録曲の多くはいずれかの作品の人気曲を流用しているが、オリジナルの新曲も引けを取らぬ出来となっている。その好例であるこの曲は、融合ステージ・激闘編にて流れる一曲で、三國と戦国の融合を見事に表現している。和風と中華風の微妙な境界線を疾走感たっぷりに跨ぐことで、武将たちの夢の共演、和楽器と中国の楽器の幽玄なる協演、お祭りゲーならではの雄大な饗宴を、目一杯、堂々と盛り上げてくれる。真・三國無双戦国無双の二本の柱を混ぜ合わせて新たなシリーズ展開を打ち出すことに成功した同作を象徴する代表曲である。

同じ年に真・三國無双5(2007年)MASA氏、稲毛氏、山田氏とともに作曲を担当すると、同作ではそれまでのサンプリング音源から生演奏を取り入れることになり、小池氏自身、笛子や簫といった中国の笛を演奏する機会が増える。ギター演奏はMASA氏と山田氏に任せることになるが、演奏者泣かせの難解な譜面を頻繁に提供したという。

2008年にはOROCHIの続編として登場した無双OROCHI 魔王降臨」にてサウンドディレクターに抜擢され、以降も「OROCHI Z」(2009年)「2」(2011年)「3」(2018年)とシリーズサウンドのディレクター職を務め続ける。また、真・三國無双シリーズの新機軸として、味方との共闘に焦点を当てた真・三國無双 MULTI RAID(2009年)およびその続編「MULTI RAID 2」(2010年)においても作曲する。その他、作曲のみならず技術的な観点からサウンドプログラミングを担当することも多く、特にこれらの作品が他機種に移植される際の音の鳴らし方や音声データの扱いについて、氏なりの創意工夫が活かされている。

この時期の大きな出来事といえば、2010年4月1日付けでコーエーテクモを吸収合併し、新たにコーエーテクモゲームスが発足したことである。これを受けて小池氏らが所属するサウンド制作部にもテクモ側の作曲家が加わることになる。なお、サウンド部はコーエーテクモで早々にまとめられたが、他の開発部門はそれぞれの社風を重んじて一定の独立を保っているため、サウンド部こそが名実ともにコーエーテクモの統合を象徴していると言えるかもしれない。

統合したとはいえ、小池氏はあくまで従来通り、無双シリーズなどのいわゆるオメガフォース(補足すると、コーエーテクモには開発チームの区分けとして6つのブランドが存在し、なかでもアクションゲームを多く開発しているのがオメガフォースである)のタイトルを中心に手がけることになる。真・三國無双6(2011年)では小池氏をはじめ、おなじみのコーエーの作曲家たちが中心となって作曲し、続く「真・三國無双7(2013年)では小池氏はサウンドディレクターに任命される。また、統合の時期と前後して版権コラボを積極的におこなうようになった無双シリーズだが、このうち真・ガンダム無双(2013年)でも氏はサウンドディレクターとして活躍する。

オメガフォース以外では、シブサワ・コウシミュレーションゲームを得意とするブランド)の代表作である信長の野望シリーズにおいて、硬派な作風を打破して武将たちを猫に置き換えたソーシャル戦国シミュレーション「のぶニャがの野望」(2011年)の作曲およびサウンドディレクションを務める。同作では小池氏も猫にちなんで「こいけミャさと」名義で参加していて、以降もシリーズ作である「ぐるぐるダンジョン のぶニャが」(2015年、サービス終了済み)「のぶニャがの野望 ニャぷり!」(2018年)サウンドを手がける。また、競馬を題材としたジーワンジョッキーシリーズにもかねてより参加していて、テクモギャロップレーサーシリーズと融合し、Champion Jockey: Gallop Racer & GI Jockey」(2011年)が登場した暁には、これにも作曲陣の一員として参加する。さらにはルビーパーティー乙女ゲームを得意とするブランド)に関しても、恋愛アドベンチャー「下天の華」(2013年)にて作曲こそしないが笛の演奏で参加するなど、時折思わぬところで名前を見かけることも。

オメガフォース、それも無双シリーズに話を戻す。ガンダム無双に続き、コラボ無双の一環としてゼルダ無双(2014年)サウンドに携わると、ゼルダと無双の双方の魅力を引き出すことに成功する。翌年には大河ファンタジーとのコラボとしてアルスラーン戦記×無双(2015年)が登場、同作ではサウンドディレクターを務める傍ら作曲にも精力的に参加する。

www.youtube.com『決戦』(アルスラーン戦記×無双PS3PS4/2015年)

戦いのなかで重要な局面を迎えるときに流れるこの曲は、同作の音楽性を端的に表す一曲である。無双サウンドと言えばやはりロックやテクノテイストのイメージが強いが、同作では中世のペルシャ風の世界観を反映して、どこか異国情緒漂うエスニックなオーケストラサウンドがメインとなっている(とはいえ、もちろんギターサウンドも健在である)。小池氏自身、「趣味丸出しの音」と語る出来となっていて、とりわけこの曲はオープニングのアレンジでもあることから、決戦にふさわしい最高潮の盛り上がりを見せてくれる。アルスラーン戦記の作風に寄り添いつつ、無双の爽快感と重厚感を余すことなく詰め込んだ一曲である。

様々な版権とのコラボの果てに、満を持して自社のオールスター作品として登場した「無双☆スターズ」(2017年)では、これまた小池氏はサウンドディレクターとして、作曲にも携わる。この時期から赤羽大夢氏や増岡郷太氏ら、コーエーテクモの若手作曲家が徐々に活躍の幅を広げていくことになり、稲毛氏や山田氏(両名ともすでに退社して久しい)とともに担ってきた無双サウンドを、次の世代に託す動きが活発になる。実際、シミュレーションRPGとして世に送り出された「真・三國無双 英傑伝」(2016年)や、オープンワールド化した「真・三國無双8」(2018年)では、小池氏の担当曲はそう多くない。

www.youtube.com『DATELESS DREAMS』(真・三國無双8/PS4/2018年)

そう多くないと言っても、それでも同作で新たに役割を持つようになったフィールド曲などを中心に、小池氏のつくる世界に浸ることができる。先に紹介した『MEMORIES』同様、同作でもやはり事典の曲は小池氏の担当分であり、今度は正統派クラシックのような美しい弦楽の重奏が、乱世に生き、やがては散っていった武将たちの生き様を鮮やかに彩る。曲名は頭韻を念頭に置いて訳すと「悠久の夢」となり、その甘美な音使いが、過去への無限の追憶へと誘ってくれる。

ちなみに同作でも氏はサウンドディレクターであり、新作が出るたびにしばしばサウンドの要職についている。そのため、コンポーザーとして曲を提供する機会が減りつつあるが、今やすっかりコーエーテクモのなかでもMASA氏や中村新一郎氏に次ぐ古参の作曲家となった小池氏だからこそ紡ぎ出せる音の数々に、今後も大きな期待が寄せられる。

音楽そのものをつくるのではなく、音を通じてゲームやキャラクターをつくりあげる心づもりで、ゲームの体験と直接結びつくような、コントローラを握って遊び浸るあの昂揚感を再現すべく作曲する――小池氏のさらなる活躍が楽しみである。

 

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ジーワンジョッキーの曲も紹介したかったんですがいかんせんサントラが未発売なので、結局無双ばかりの選曲に落ち着きました。曲自体も好きですが、語感を意識した曲名のネーミングセンスも面白くて好きです。以下、参考までに今まで格納してきた小池さんの楽曲をどうぞ。