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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を一日一曲を目安に紹介します。

#603 『ラミヤカ人の道』(中沢伴行・三澤康広/オアシスロード/PS)

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キライ製作所がおくる探索RPG・オアシスロードより、

中沢伴行三澤康広作曲、『ラミヤカ人の道』(仮称)。同名の交易路で流れます。

メールプラーナのスタッフがガスト独立後にほぼ二人だけで開発したことで知られる本作。砂に埋もれ、緩やかに滅びゆく黄昏の世界を舞台に、白地図を手に失われた交易路を復活させ、遺跡から古代の知識や技術を蘇らせ、人々の営みを活性化させていく。馬車を引いてまだ見ぬ街を目指し、そこで交易をおこなうことで、徐々にその土地の風土や文化を知り、見聞を広めていくことになるが、肝となる交易システムや戦闘システム、それにシナリオも、いずれも非常に簡素なつくりである。その退廃的ながらも生気に満ちた世界観が何よりの魅力である。

本作の音楽を担当するのは中沢伴行氏と三澤康広氏。両氏は当時、音楽関係のアルバイトの同期だったらしく、知り合いのつてで大学在学中に本作の作曲に携わった。そのため、後にコーエーに所属することになる三澤氏にとってはおそらく本作がデビュー作である(中沢氏のデビューは本作の20日前に発売されたアダルトゲームにおいてである)。本作の世界観形成に多大な貢献をしているのが音楽であり、抜群の統一感を誇る民族音楽調の物憂げな、それでいて力強くもある楽曲の数々が、黄昏の世界を美しく彩ってくれる。サウンドトラックは残念ながら未発売のため、曲名は便宜上の仮称とする。

ラミヤカ人の道とは、元々は北方の海に住んでいた民族が、急激な気候変動を機に海を捨てて南下してきた際に通る地域である。ラミヤカ人は武勇に優れる好戦的な民族だが、大地が荒廃しているためにもはや争ったり奪ったりする必要もなくなり、そうした妙な安寧と歪な無常観とが、この土地で流れるこの曲において完璧に表現されている。アンニュイなフルート、メランコリックなピアノ、センチメンタルなストリングス、デリケートなハープ、その他すべての楽器が絡み合って奏でるリリカルな旋律は、思わず息を呑むほどに美しい、壮大な悲愴感を醸し出している。本作全体を貫く雰囲気を丸ごと凝縮したような一曲である。

サウンドトラックを切実に出してほしい作品ですね。あまりにも見事に雰囲気に合っていて、素晴らしいの一言に尽きます。