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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#613 『働き蜂のいない巣で』(柳川和樹/エスカ&ロジーのアトリエ ~黄昏の空の錬金術士~/PS3)

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ガストがおくる錬金術RPG・アトリエより、

柳川和樹作曲、エスカ&ロジーの『働き蜂のいない巣で』。未踏遺跡で流れます。

錬金術を使って仕事をしたり冒険したりするアトリエシリーズのうち、通算15作目、アーシャに続き黄昏シリーズの2作目として登場した本作。滅びを迎えつつある黄昏の世界観はそのままに、今度は辺境の街・コルセイトを舞台に、コルセイト出身の少女・エスカと、中央の研究都市から配属された青年・ロジックス(通称ロジー)の二人の主人公が、未開発地方の開発班として奮闘することになる。久々のダブル主人公制ということで、肝となる調合はエスカが、錬成はロジーがそれぞれ分担しておこなう。錬金術の基本的なシステムが強化されたほか、戦闘システムも前衛・後衛あわせて最大6人で連携しながら戦う入り乱れバトルが採用され、より白熱した展開を楽しめるようになった。後にPSVita向けに追加要素を加えたPlusが登場したほか、アニメ化もされた。

本作の音楽を担当するのは阿部隆大氏、浅野隼人氏、阿知波大輔氏、菊田裕樹氏、木下英幸氏、下田祐氏、柳川和樹氏、ユウ(中島優美)氏、Shade氏。このうち浅野氏、阿知波氏、下田氏、柳川氏は当時ガストに所属していた作曲家で、なかでも浅野氏と柳川氏はアニメの劇伴(ゲームの曲をアレンジしたものがすくなくない)も手がけている。また、菊田氏やShade氏など、現時点でシリーズに携わったのは本作のみという特殊なゲストコンポーザーも参加していて、担当曲数はそう多くないながらもアトリエサウンドに新たな風を吹き込んでいる。サウンドトラックはインストゥルメンタルのものを中心に収録したもののほか、ボーカルアルバムやアニメの劇伴音楽集も発売されている。

未踏遺跡、街の上空に浮かぶこの前時代の空中遺跡は、物語後半にかけて鍵を握ることになる重要な場所である。そこで流れるこの曲は、ストリングスの緊迫した音色に、豊かなコーラス、鳴り響く鐘の音、そして何よりも印象的なバグパイプの賑やかな旋律を重ね合わせた壮大なオーケストラサウンドである。クライマックスの雰囲気を目一杯盛り上げるにあたって、その情熱と哀切に満ちた音使いのなかに民族音楽のエッセンスを凝縮することで、独特な聴き心地の良さを誇る。示唆的な曲名とあわせて、迫りくる物語の終焉を色濃く感じさせる一曲である。

この曲は聴ける期間が限られているので、幻のような美しさがありますね。