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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を一日一曲を目安に紹介します。

#617 『オープニング』(島田竜/この世の果てで恋を唄う少女YU-NO/PC98)

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エルフがおくるSFアドベンチャーこの世の果てで恋を唄う少女YU-NOより、

島田(梅本)竜作曲、PC98版の『オープニング』。オープニングデモで流れます。

DESIREやEVE burst errorと並び、企画者兼脚本家の故・剣乃ゆきひろ菅野ひろゆき)氏の代表的な三部作の一つとして知られる本作。歴史学者の父を事故でなくした主人公・有馬たくやは、高校最後の夏休みに自分宛てに届いた謎の小包に導かれて、並行世界を旅していくうちに、自らの出世の謎や世界の在り方を知ることになる。本作の大きな特徴として、並行世界の分岐状況を可視化するオープ分岐マッピングシステム、通称A.D.M.Sを採用しているため、今まで辿ってきたルートやこれから進むべきルートを逐一確認することができる。その画期的なシステムと、歴史や数学、物理学、哲学などの諸分野を組み合わせた高度なSF的世界観とが相まって、今なお伝説のアドベンチャーゲームとして語り継がれている。後にセガサターンやPCに移植されたほか、20年以上の時を経てPS4PSVita、スイッチなどにもリメイクされた。

本作の音楽を担当するのは故・島田(梅本)竜氏、神奈江紀宏氏、高見龍氏の三名。セガサターン版では新規のオープニング曲担当で与猶啓至氏や、アレンジ担当で佐藤龍一氏も参加している。また、リメイクにおける特典ミニゲーム(ユーノの大冒険)は阿保剛氏が作曲を手がけている。オリジナルのPC98版のスタッフロールには島田氏のみクレジットされているが、実際には島田氏が制作途中に過労で失踪したらしく、その穴埋めとして神奈江氏と高見氏が急遽残りの楽曲(主に異世界編のもの)を仕上げたという。こうした極めて特殊な経緯で作曲された本作の楽曲だが、クオリティについては申し分なく、いずれもFM音源を駆使した統一感たっぷりの仕上がりとなっている。サウンドトラックはアレンジ盤とセガサターン版の音源のものの二種類に加え、リメイクの限定特典としてオリジナルのハイレゾ音源版も存在する。

オリジナル版のオープニングで流れるのがこの曲である。神秘的な妖しさに満ちたイントロが、たちまちプレイヤーを魅惑の世界へと誘い、FM音源特有のざらついたような無機質さでもって奏でられるミステリアスな旋律が、それを鮮やかに彩る意味深な映像と相まって、さらなる深みへと手引きする。音源、描画ともに強い制約が課せられるなか、その両方の魅力を十二分に引き出した魔術的な表現力が印象的で、特にこのオープニング映像でのみ明かされる物語のヒントが潜んでいるなど、メタ的な攻略要素すら含まれている。ただ美しいだけに留まらぬ大きな意義を持つオープニングである。

アニメの最終回直前ということで紹介してみましたが、つい途中から音楽より映像のほうに話がシフトしてしまいました。このオープニングは一度見聞きしたら忘れ得ないインパクトがありますね。