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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#627 『Liberation (La Muerte de Papo)』(Brian D'Oliveira/Papo & Yo/PS3)

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Minority Mediaがおくるパズルアドベンチャー・Papo & Yoより、

Brian D'Oliveira作曲、『Liberation (La Muerte de Papo)』。エンディングで流れます。

カナダのゲームスタジオ・Minority Mediaのデビュー作として登場した本作。ブラジルのファヴェーラ(スラム街)を舞台に、少年・Quicoは、カエルを食べると凶暴化する親友のモンスターと協力して様々なギミックのあるパズルを解いていくことになる。仕掛けを解くには好物のココナッツを与えてモンスターの機嫌を見極め、ときには凶暴化の状態をうまくチャンスに変えながら、モンスターとの関係を良好に保つことが重要となる。制作者のVander Caballero氏の幼少期のトラウマをもとにつくられたこともあり、全編を通して紡がれるそのどこか示唆的でセンセーショナルな世界観が、強く心に訴えかけるような、解釈の余地がある仕上がりとなっている。後にPCにも移植された。

本作の音楽を担当するのはBrian D'Oliveira氏。カナダのサウンドスタジオ・La Hacienda Creativeに所属するベネズエラ出身の作曲家である。本作ではファンタジーらしい幻想的な作風と、実在するファヴェーラの雰囲気を表現するにあたって、フルートやチェロ、ギターやバイオリンといった馴染みの楽器はもちろん、アピート(ブラジルの伝統的な狩猟用の笛)、サーランギー(インドの撥弦楽器)、コラ(西アフリカのリュート)など、古今東西、ワールドワイドな楽器を用いて作曲したという。楽曲はいずれも民族音楽調のソウルフルな仕上がりとなっていて、サウンドトラックはPSNやSteamなどの各種オンラインストアでデジタル配信されている。

衝撃的なラストシーンとそれに続くスタッフロールの場面で流れるのがこの曲である。柔らかく牧歌的なメロディーラインに天使のような純粋無垢な歌声が重なることで、その素朴な組み合わせが、特に激しい曲調というわけでもないのに、鬱積した感情が一気に解き放たれるようなカタルシスにあふれている。南米の諸言語を融合して生み出したと思われる造語歌詞が、曲全体を貫く透明感や清澄感をいっそう強め、現世と幽世の境を彷徨う不可思議な感覚を味わわせてくれる。曲名はずばり「解放」を意味し、括弧内のスペイン語は「パポ(=父)の死」となるが、象徴的なラストシーンとあわせて非常に考察し甲斐のある表現となっている。

カタルシスということばがぴったりですね。解放感と虚脱感とが同時に襲ってくるような感じがすごく心地良くて、物語の最後を飾るにふさわしい一曲ですね。