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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#637 『637 volpe』(Baiyon/PixelJunk Eden/PS3)

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Q-Gamesがおくるオーガニックプラットフォームアクション・PixelJunk Edenより、

Baiyon作曲、『637 volpe』。ガーデン01で流れます。

異なるジャンルの連作として知られるQ-Gamesのダウンロード配信シリーズ・PixelJunkのうち、3作目にあたる本作。植物の世界を舞台としたワイヤーアクションゲームで、無数のガーデンの集合体たるエデンを散策して、制限時間内にガーデンのそこかしこに散らばる生命の源であり宝物であるスペクトラを集めることになる。常に成長を続けるダイナミックな植物と、それを見目鮮やかに彩る有機的なグラフィックが印象的で、アーティスティックな空間を縦横無尽に駆け巡る快感が、シンプルなアクション性と相まって絶妙な心地良さを誇る。総じてユニークな感性が光る仕上がりとなっていて、後に拡張版のEncoreやアプリ版のObscuraが登場した。

本作の音楽を担当するのはBaiyon氏。京都(Q-Gamesの本拠地でもある)を中心に活躍するマルチアーティストで、DJ、サウンドプロデューサー、アートディレクター、グラフィックデザイナーなど、実に様々な顔を持つ気鋭のアーティストである。ゲーム音楽を担当するのは本作が初めてで、PixelJunkシリーズに関わって以来、今ではQ-Gamesのクリエイティブプロデューサーに就任している。作曲のみならずアートディレクションやアーティスティックコンセプトをも担当した本作では、サウンドとグラフィックを融合した高純度な世界観をつくり出していて、楽曲はいずれもフレッシュなミニマルテクノ・ハウスで統一されている。サウンドトラックはEncore発売前に登場したものと、発売後に追加楽曲も収録したものとで二種類存在する。

ぜんぶで10(Encoreでは15)あるガーデンのうち、記念すべき最初のガーデンで流れるのがこの曲である。イントロから30秒間ほどは静寂に潜み、ようやくパーカッションが挿入されると、そこからさらに1分、主旋律が加わるまで同じフレーズが繰り返される。待ちに待った主旋律は非常にミニマリスティックで、派手なメリハリこそないものの、根強く反復することで、何か捉えどころのない安心感のようなものをもたらしてくれる。その洗練された音使いは、温もりや優しさとは縁遠いように思える一方で、静かにみなぎる生命の律動を感じさせ、本作の独特な世界観をひとまとめに表現した一曲に仕上がっている。

すごく無機質なイメージなのに、聴けば聴くほど生気にあふれているところが秀逸ですね。ゲームのほうもシンプルな割に意外と良い難易度なので、なかなかの陶酔感があります。