VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を一日一曲を目安に紹介します。

#660 『水月』(おおくまけんいち/水月 -すいげつ-/PC)

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F&Cが手がけるノベルアドベンチャー水月より、

おおくまけんいち作曲、『水月』。オープニングで流れます。

民俗学や伝奇の世界観を色濃く反映した18禁のアダルトゲームとして登場した本作。突如記憶喪失に陥った主人公は、自称メイドの琴乃宮雪や友人の宮代花梨新城和泉、近所に住む教会暮らしの双子・香坂アリスとマリア、主人公にやたら懐いている大和鈴蘭、そして夢のなかでたびたび姿を現す少女に酷似した同級生の牧野那波に囲まれながら、一夏の思い出を過ごすことになる。記憶や認識の問題を扱っているため、どこか重苦しくも幻想的な作風が特徴的で、神話や哲学といった考察し甲斐のあるテーマを多く取り込んでいる。後にドリームキャストPS2PSPにも移植された。

本作の音楽を担当するのはおおくまけんいち(大熊謙一)氏。F&Cの作品では分社化された別レーベルも含めると本作以前にPiaキャロ3にて作曲経験がある。本作ではコンシューマー版でこそボーカル入りの主題歌が収録されているが、原作のPC版はインストゥルメンタルのみで、どことなくミステリアスでアンビバレントな空気感を表現した透明感あふれる静かな楽曲が多く揃っている。サウンドトラックはPC版とコンシューマー版で二種類発売されている。

ピントが定まらないようなぼやけたオープニング映像とともに流れるのがこの曲である。作中に登場する女の子たちが紹介され、それが終わったら一部のスタッフの名前が、最後にはゲーム名が表示される、というオーソドックスな構成だが、その魔術的な色味や流麗なピアノの音色と相まって、一気に幻想の世界へと誘うかのような没入感を誇る。沈鬱な響きを帯びた旋律は、不安を掻き立てつつ、息を呑むほどの美しさと優しさに満ちていて、ようやく1分半あたりでサビに突入すると、その儚くも力強い音使いは、水面に映る月のごとく神秘的な雰囲気を醸し出す。まさしく本作の息吹をそっくりそのまま感じさせる霊妙な一曲である。

曲もゲームもおすすめです。