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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#665 『桜竜』(北村友香/SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE/PC・PS4・XOne)

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フロムとActivisionがおくるアクションアドベンチャー・SEKIROより、

北村友香作曲、『桜竜』(英題は『Divine Dragon』)。桜竜戦で流れます。

戦国時代末期の日本を舞台とした和風アクションアドベンチャーとして登場した本作。北国・葦名を舞台に、不死の力である竜胤を宿すがゆえに幽閉された御子を取り戻すべく、彼に仕える忍びである隻腕の狼が、復讐のために立ち上がることになる。激しい剣戟や相手の隙を突く忍殺、道なき道を駆け巡る鉤縄を駆使しつつ、自らの死をもって切り拓くアクション性が特徴で、一度死んでも(回数に限りはあるが)回生の力でその場復活できるなど、死に覚え重視のスリリングなゲームバランスが持ち味である。美しく描き込まれた戦国の世界、孤独な主従をめぐる重厚な物語、一瞬の勝機をも見逃せぬシビアな難易度と相まって、非常に歯応えのある仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは朝倉紀行氏と北村友香氏。北村氏は当時フロムに所属していた作曲家で、朝倉氏は音楽制作会社メガアルファを率いる作曲家である。このうち朝倉氏は過去には天誅シリーズを手がけたこともあり、本作でも和風、特に忍びの世界に焦点を当てた作品として臨場感のある音を提供している。本作の楽曲は主に和楽器とオーケストラを融合させたものが多く、緊張感や焦燥感、ときには恐怖すら煽るような壮大なサウンドが揃っている。サウンドトラックは予約特典として一部楽曲を収録したミニサントラが同梱されているほか、海外向けのデジタルサントラもあり、前者は日本語の曲名が、後者は英語の曲名が明かされている。また、作中の会話劇も含めて全曲収録したものも国内向けに発売された。

竜胤の力の祖である桜竜との戦いで流れるのがこの曲である。桜竜の涙には竜胤を断つ効能があり、桜竜戦の目的は殺すことではなくあくまで涙を拝領することであるが、そうした特殊なイベント戦闘のようなシチュエーションを、篠笛の甘美な旋律が情緒豊かに表現している。ストリングスやコーラスを伴いながら徐々に壮麗さを増していくその音使いは、2分10秒あたりで一旦無音になると、そこから一際力強く、神通自在とすら言えるほど意気盛んに展開していく。まさに神話を追体験するような昂揚感に満ちた一曲である。

桜竜戦は雷返しのエフェクトの格好良さと相まって好きな戦闘です。

※追記 国内サントラの発売を受け、記事タイトルの曲名を『Divine Dragon』から『桜竜』に変更し、記事内容を一部修正しました。