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隔週末の作曲家談議 vol.024:足立美奈子

作曲家について語るコラムです。

vol.024で扱うのはゲームフリークの足立美奈子(あだち・みなこ)氏。

代表作は「サモンナイト」「D.H.Eシリーズ」「ポケモン」など。

なお、記事に記載された内容はすべて2019年11月23日のものです。

まずは一曲。

www.youtube.com『戦闘!フラダリ』(ポケットモンスター X・Y3DS/2013年)

悪の組織・フレア団のリーダーであるフラダリとの戦闘で流れるのがこの曲である。フラダリは優秀な研究者でありながら、己が理想のために最終兵器を起動させて世界を浄化せんとする過激な選民思想の持ち主で、その歪んだ正義感を表現すべく、この曲はノイズやディストーションの効いたデジロック調の仕上がりとなっている。禍々しい勢いで奏でられる旋律は、エレキギターの轟音だけでなく美しく透き通るクワイアなども加えながら盛り上がっていき、狂おしいほど鮮やかに戦闘を彩ってくれる。フラダリ本人の外見の迫力と相まって、非常に印象に残りやすい一曲である。

足立美奈子氏、生年不明(1970年代の生まれか)新潟県出身の作曲家。名義は旧姓で、現姓は松岡。民謡歌手の母親の影響により幼少期から音楽に親しむ。得意楽器はピアノで、三味線の演奏もできる。初期の担当作として挙げられるのはDEN’Zのアクションゲーム「スパークワールド」(1995年)で、2年前にできたばかりの禎清宏氏率いる音楽制作会社ピュアサウンドの設立初期から在籍していた。アテナのスーパーファミコン向けサウンドノベル「夜光虫」(1995年)では禎氏がサウンドプログラマー、足立氏がサウンドオペレーターとして携わり、後にゲームボーイカラー版が登場した際もピュアサウンドが音楽と効果音を手がけている。スーファミ作品以外では、ボトムアップによるニンテンドウ64用の相撲ゲーム「64大相撲」(1997年)にて同僚の横田拓也氏とともに作曲しているほか、同じくボトムアップ製のモンスター育成ゲーム「おねがいモンスター」(1999年)にもサウンドデザインで携わっている。

足立氏にとっての初期の代表作はフライトプランシミュレーションRPGサモンナイト(2000年)で、藤田千章氏とともにシリーズサウンドの礎を築く。また、翌年にはカプコンが開発を務めたアクションアドベンチャーゼルダの伝説 ふしぎの木の実 大地の章・時空の章」(2001年)の作曲を手がけ、据置機・携帯機いずれにおいても順調に実績を積み上げる。

www.youtube.com『レベル4(りゅうのまうダンジョン)』(ゼルダの伝説 ふしぎの木の実 大地の章/GBC/2001年)

大地の章と時空の章ではシナリオやダンジョンが異なるため、収録曲も異なるが、この曲も大地の章限定で登場する「りゅうのまうダンジョン」でのみ流れる。ちょうど物語中盤あたりに訪れ、新たに入手するパチンコを軸に攻略することになるが、そうした道半ばの昂揚感を、ずしんと響く低音でもって焦燥感たっぷりに表現している。22秒あたりで小刻みに震える伴奏が加わると、その音使いは踊るように軽快でありながら、同時に芯のある濃密さをも兼ね備えていて、1ループ40秒ほどの短さのなかにダンジョンの醍醐味が凝縮されている。

ゼルダシリーズに携わるのは現時点で同作が最初で最後だが、サモンナイトシリーズにはその後も長く関わり続ける。サモンナイト2(2001年)サモンナイト3(2003年)といったナンバリング作品はもちろん、外伝の「サモンナイト クラフトソード物語(2003年)クラフトソード物語〜はじまりの石〜」(2005年)でも、禎氏や松岡耕平氏らピュアサウンドの面々とともに作曲をおこなう。また、時期を前後してナツメの育成RPG「携帯電獣テレファング2」(2002年)にも作曲で参加している。このように、主にRPGを中心に冒険感あふれる力強いサウンドを生み出す。

www.nicovideo.jp『狂妄のエルゴ・界に仇為す者』(サモンナイト3PS2/2003年)

最終話のラストバトル、ハイネルのディエルゴとの戦いで流れるのがこの曲である。エルゴ(界の意志)とはサモンナイトシリーズ共通の世界の根源たる存在で、数々の戦いや陰謀の末に暴走して主人公たちに牙を剥くことになる。避けられ得ぬ激闘に立ち向かう一行の決意と覚悟を後押しするかのごとく、この曲は全編にわたり壮大なオーケストラサウンドに仕上がっている。威圧的で独裁的な、神にも等しい森羅万象の祖との凄絶な聖戦を見事に表現した一曲である。

ここで忘れてはいけないのは、足立氏とスティング作品、特にファンタジーRPGRiviera 〜約束の地リヴィエラ〜(2001年)を起点とするDept. Heaven Episodesシリーズとの関わりである。リヴィエラでは単独で作曲(移植に際しての追加曲やアレンジは当時スティングに所属していた林茂樹氏が担当)し、次作のユグドラ・ユニオン(2006年)では林氏と分担しながら作曲する。同作はキュートな絵柄とは裏腹に戦争をテーマにしたシビアでハードな作風が持ち味で、そうした雰囲気に応えるかのごとく楽曲も重厚な仕上がりとなっている。

www.youtube.com『バトル・オン・ザ・レクイエム』(ユグドラ・ユニオンGBA/2006年)

曲名と同名のタイトルを冠する9章をはじめ、終盤のいくつかのバトルフィールドで流れるのがこの曲である。激しくビートを刻むドラムの上を、ストリングスやブラスの音色が重なり合いながら縦横無尽に響き渡ることで、勇猛かつ荘厳な雰囲気を目一杯漂わせている。キャッチーだがどこか切なさ薫る泣きメロを用いることで、最終局面に差し掛かるシチュエーションと相まって、戦闘曲でありながら鎮魂の役割をも果たす悲愴感たっぷりな一曲に仕上がっている。

同作から派生した携帯電話用アプリユグドラ・ユニゾン(2007年)でも作曲していて、後に2009年にDSに移植された際にも楽曲が引き継がれる。D.H.Eシリーズに関わるのは現時点でこれが最後となる。同じ頃、マーベラスアクションRPGアヴァロンコード(2008年)に駒形めぐみ氏とともに携わると、翌年に同じくマーベラスによる超速RPG勇者30(2009年)でも、複数の作曲家と一緒に担当する。同作は1ステージ30秒で旅立ちから魔王討伐までをこなすという内容のものである。

www.youtube.com『苦闘の果て』(勇者30PSP/2009年)

同作では1ステージ終えるごとにリザルト画面のみならずスタッフロールとエピローグが挿入されるが、そのエピローグで流れるのがこの曲である。エピローグといっても実質次回予告に近いものだが、そこで流れるこの曲は非常にしんみりとした、まさに長き(30秒)にわたる苦闘を労わる仕上がりとなっている。寂寞とした笛の旋律が、ギターやストリングス、ピアノのメランコリックな音色と相まって、物憂げでありながら力強く展開していき、さらなる冒険へと旅立つ勇者の背をしっかりと押してくれる。作品全体を貫くユーモアとペーソスをうまく調理した一曲である。

サモンナイトX 〜Tears Crown〜(2009年)を最後に長らく所属してきたピュアサウンドを離れると、その同じ年にはゲームフリークに入社。翌年のポケットモンスター ブラック・ホワイト(2010年)で初めてポケモンシリーズに携わると、担当曲はすくないながらも短いジングルなどで存在感を示す。次の「X・Y」(2013年)ではハードの移行に伴って進化した音源を駆使しつつ、担当曲を増やして主に悪の組織関連のシリアスな楽曲を手がける。

ポケモン以外では、ゲームフリークが開発した音楽ゲームリズムハンター ハーモナイト(2012年)にて、禎氏をはじめ、かつてのピュアサウンドのコンポーザーたちとともに作曲することになる。また、ピュアサウンド時代からAHSの著作権フリー音楽ループ素材集・SoundPooLに楽曲を提供していて、「vol.8 ~ アニヲン♪ビターPOP ~」(2009年)や「vol.14 ~ ゴシック系J-POP素材集~」(2011年)などで、VOCALOIDを用いたボーカル曲の作曲も手がけている。

ポケモンの話に戻る。2014年にポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイアが登場すると、リメイク作品ということもあってアレンジを中心に担当し、その手腕を発揮する。続く「サン・ムーン」(2016年)および「ウルトラサン・ウルトラムーン」(2017年)でも、一之瀬剛氏や増田順一氏とももに作編曲を担う。

www.youtube.com『リーグへの道』(ポケットモンスター サン・ムーン3DS/2016年)

同作では名称こそ異なるが、いわゆるシリーズ恒例のチャンピオンロードで流れるのがこの曲である。ラナキラマウンテンという作中で最高峰の雪山が舞台で、最強を目指して山頂へと突き進む様子を、壮大なオーケストラサウンドが緊張感たっぷりに彩ってくれる。凍てつくようなピアノの旋律から始まり、バイオリンやトランペットの勇ましげな音色が奏でられ、さらにはどことなく民族音楽風な笛の音が加わると、畳みかけるように力強く盛り上がっていく。寒冷地ならではの身に染みるような寒さと、それとは正反対に高まる鼓動、体内からほとばしる情熱とが見事に溶け合った一曲である。

直近の担当作はポケットモンスター ソード・シールド」(2019年)で、一之瀬氏やToby Fox氏らとともに作曲をおこなっている。同作では観客の声を取り入れたりロックやパンクなどのジャンルを積極的に採用したりしていて、今までとは一味違う新世代のポケモンサウンドを生み出すに至った。

ピュアサウンドゲームフリークと渡り歩いてきた足立氏だが、今後もその豊かな作風を活かしながら、さらなる活躍を見せてくれることが期待される。

 

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緊張感というか切迫感というか、何かそわそわした感覚を曲で表現するのがうまいイメージです。以下、参考までに今まで格納してきた足立さんの楽曲をどうぞ。