VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#708 『じぶんち』(赤木智広/ワールド・ネバーランド ~オルルド王国物語~/PS)

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リバーヒルソフトがおくる仮想世界体験シミュレーション・ワーネバより、

赤木智広作曲、オルルド王国物語の『じぶんち』。家の中で流れます。

上記動画の3:08から3:46まで。

ファンタジー世界に移住して気ままな生活を送るワールドネバーランドシリーズの第1作として登場した本作。小規模な王政都市国家・オルルド王国を舞台に、プレイヤーは一住民として暮らしていくことになる。オルグと呼ばれる三つの職業組織のいずれかに所属し、仕事に励むも武芸を磨くも恋愛に溺れるもよし、結婚して世代交代しても自分の子どもにプレイヤー権を引き継がせることで延長プレイできる(しない場合は操作キャラが寿命を迎えるとゲーム終了)。緻密に練り込まれた奥深い世界観と、極めて自由度の高いゲーム性が特徴的な仕上がりとなっている。後にドリームキャストPSP、PCにも移植された。

本作の音楽を担当するのはおとのかぜ(音風)こと赤木智広氏。当時リバーヒルソフトに所属していたと思われる作曲家である。本作では間断なく続くファンタジーライフにあわせて、日常生活にぴったり合致するようなソフトでミニマルなヒーリングサウンドが多く、一部例外はあるが楽曲全体で概ねテンポと曲調を統一することで、場面が変わっても組曲のようにスムーズにシームレスに音楽が移ろうようになっている。サウンドトラックはプロトタイプの未使用曲も含めて収録されたものが発売されている。

家の中で流れるのがこの曲である。休息地点として日々の疲労やストレスを癒すだけでなく、所帯持ちなら配偶者と子どもと一緒に暮らし、家族の会話を楽しんだり、ときには出産や危篤の場面に立ち会ったり、あるいは各地に散らばる王国の謎を紐解くメモを閲覧したりできるが、そうした人生のドラマが凝縮された自宅を彩るのが、ほとんど最小限といっても過言ではないほどシンプルなメロディーで構成されるこの曲である。柔らかい電子音に、時折シャンと鳴り響くタンバリンのような音が加わることで、耳心地の良い安堵感を与え、無音の休止さえもが独特な和みをもたらしてくれる。マイルドな印象を持つ曲名も相まって、短いながらも優しく心に寄り添うような一曲である。

ルルド王国から何か、というリクエストをいただきました。一曲ずつ抽出して聴くというよりは、楽曲全体で連続的な没入感があって調和しているような感じなので、上記動画の指定の再生箇所以外にも通しで聴くことをお勧めします。