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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#715 『アルゴス戦』(高田雅史/VANQUISH/PS3・X360)

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プラチナゲームズがおくるシューティングアクション・ヴァンキッシュより、

高田雅史作曲、『アルゴス戦』。巨大兵器アルゴスとの戦闘シーンで流れます。

ベヨネッタよろしくプラチナゲームズが開発を、セガが販売を手がける作品として登場した本作。人類が宇宙に進出した近未来を舞台に、アメリカの51番目の州であるスペースコロニープロビデンスで起きた謎の侵略と襲撃に対処すべく、新型バトルスーツARSを装着した政府のエージェント・サムが戦いに身を投じることになる。ジャンルはTPSだが、高速移動が可能なブーストや周囲を一時的にスローモーション化させるARモード、銃火器以外にもパンチやキックなどの近接攻撃がフィーチャーされているなど、アクション要素も充実している。さながらSF映画のような世界観とシナリオで彩られた仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは杉森雅和氏、高田雅史氏、丹羽映理納氏の三名。杉森氏は当時、音楽制作会社デザインウェーブに所属していた作曲家で、高田氏はフリー、丹羽氏はプラチナゲームズに所属している作曲家である。このうちベヨネッタでも作曲経験のある丹羽氏がリードコンポーザーを務めていて、高田氏とほぼ半々の割合で作曲している(杉森氏は1曲のみの担当)。本作ではディレクターの意向で「主役はSEで、曲はバックダンサー」という基本的な方向性が示されていて、こだわり抜かれた効果音を引き立たせるようなミニマルなテクノやデジロック調のシンセサウンドが多い。サウンドトラックは3枚組で発売されている。

大量破壊兵器アルゴス、いわゆる中ボスに相当する敵との戦いで流れるのがこの曲である。アルゴスは四足歩行形態と二足歩行(人型)形態の二種類に変形可能な巨大兵器で、多彩な攻撃を組み合わせて翻弄してくるが、そうした歯応えのある戦闘をソリッドでアグレッシブなハードコアテクノで魅せてくれる。不気味な印象を与える歪んだ電子音に、疾駆するギターリフの轟音がとめどなく響き続けることで、手に汗握る展開を激情的に彩り、繰り返されれば繰り返されるほど加速度的に昂揚感を刺激する。スリリングかつストイックにシューティングとアクションの爽快感を表現した一曲である。

バックダンサーという言い回しは極めて的確で、激しい曲調であるにも関わらず、曲はゲームそのものを喰うほど自己主張が強くなくて、あくまでバックグラウンドミュージックに徹している、というところが絶妙なバランスだと思っています。