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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#745 『想モ影より出づるモノ』(Mariam Abounnasr/鬼ノ哭ク邦/NS・PS4・PC)

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Tokyo RPG FactoryがおくるアクションRPG・鬼ノ哭ク邦より、

Mariam Abounnasr作曲、『想モ影より出づるモノ』。

英題は『Battle -Shadow-』で、中ボス戦で流れます。

いけにえと雪のセツナの系譜を継ぐProject SETSUNAの第3弾にあたる本作。輪廻転生の掟が根付く邦を舞台に、死者を見送る役目を負った逝ク人守りの青年・カガチは、謎の少女・リンネとの出会いを通じて、生死の在り方を問う波乱の運命に巻き込まれていく。互いに干渉し合う、現シ世と幽リ世の二つの世界を行き来しながら、鬼ビ人と呼ばれる存在を憑依して戦うことになり、戦闘中に鬼ビ人をリアルタイムで切り替えることで、さながら複数のジョブとその特殊能力を使いこなせる仕組みとなっている。独特な用語を交えたユニークな死生観が反映されたシナリオに、ハクスラ風のスピーディーな戦闘システム、二つの世界を跨ぐ多彩なギミックなど、意欲的な要素が詰め込まれた仕上がりである。

本作の音楽を担当するのはMariam Abounnasr氏と土屋俊輔氏。いずれも音楽制作会社プロキオン・スタジオに所属する作曲家で、両名ともProject SETSUNAに携わるのは初めてである。このうちAbounnasr氏は作曲のみならず、タンバリンやシェイカーなど一部の打楽器の演奏も手がけている。本作の世界観は和風ダークファンタジー然とした趣だが、音楽の方向性は必ずしも和風ではなく、クラシカルな管弦楽器や民族楽器を用いた、哀愁漂うオリエンタルサウンドが揃っている。また、全編を通して無音の間を重視する演出が徹底されているため、音楽が流れないシーンもすくなくない。サウンドトラックはレベルアップなどの短いジングルも含めて収録されていて、日本語に加え英語の曲名も付されている。

序盤のツノノケ戦など、中ボスとの戦闘で流れるのがこの曲である。第一音からケルト風味の音色が鳴り響く力強いイントロが特徴で、バイオリンやギターによる疾走感たっぷりの伴奏を伴って、実り豊かな旋律を紡いでいく。まるで楽器たちが主役となって宴を催しているかのような印象を与える軽快な曲調は、アイリッシュともスパニッシュともとれるような味わい深い魅力を誇る。特に1分7秒以降、バイオリンが即興風の高音を相次いで奏でると、その伸び伸びとした美しさのなかに一種独特な切なさが漂う。民族音楽特有の情熱と悲哀が凝縮された一曲である。

曲名にある「想モ影」(おもかげ)とはときどき出現するレアモンスターのことを指しますが、別にこの曲は想モ影戦で流れるわけではありません(そもそも想モ影戦には専用曲がありません)。演出の都合上、本作は音楽が目立たない場面が多くて、この曲も含めて、いつどこで流れたのか、全体的に印象に残りにくい気がしますが、それも含めての演出でしょう。