VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#754 『Sleeping Clouds』(Radio Giraffe/フリー素材)

soundcloud.com

SoundCloudで配布されているフリー素材より、

Radio Giraffe作曲、『Sleeping Clouds』。Magnetizedなどで使われています。

プロ・アマ問わず音楽を自由に投稿および試聴できる音楽ファイル共有サイト・SoundCloudにて、2012年頃から活動しているRadio Giraffe氏。カリフォルニア出身の作曲家で、初代ゲームボーイDMG-01)を使って作曲するチップチューンアーティストである。チップチューンに加え、ブレイクコア的な要素を持つ楽曲を生み出すこともあり、そのなかの一部はダウンロード可能なフリー素材として無償公開されている。

『1983』や『Rejects』、『Missile Slumber』シリーズなど、コンセプトを同じくする楽曲をEPの形式で発表することが多いなか、一曲で完結するシングルもすくなからず存在する。そのなかの一つが『Sleeping Clouds』で、実際のゲームでの使用例を挙げると、台湾のインディーゲームデベロッパー・Rocky Hongがおくるミニマリスティックな物理パズルゲーム・MagnetizedのBGMとして採用された。本作は全60面で構成され、迷路状の細長いステージを自機の小さな黒いドットで進むことになるが、自機の方向転換は原則不可能で、磁石の力で吸い寄せることでのみ軌道を修正できる。壁にぶつかれば即死、緻密な操作で軌道を正しく計算する能力が問われるシビアな死に覚えゲーだが、この曲は1~20面において淡々と流れ続けることで、序盤を生き抜くために必要な集中力と昂揚感をひたすら高めてくれる。

最初から最後まで、通奏低音のように響くシンプルな伴奏が特徴で、第一音からしていかにもレトロな雰囲気が漂うチップチューンに仕上がっている。55秒からは音を削って伴奏のみの静寂を演出し、アップテンポなメロディーラインに緩急をつけ、続いて1分35秒からもまたしても伴奏を引き立たせる工夫を凝らすことで、ミニマルなフレーズの繰り返しに飽きを来させないような細やかな配慮が行き届いている。転調もなく、ずっと同じ調子で大きな変化がないなかで、それとは裏腹に、不思議とメリハリ豊かな印象を与える一曲である。

淡々としているけれど飽きないというのは、曲の構成の良さに加えて、GB音源ならではの魅力も影響しているのでしょうね。MagnetizedはSteam(有料)やKongregate(無料)などで遊べます。