Keyがおくる恋愛アドベンチャー・Summer Pocketsより、
水月陵作曲、『Summer Pockets』。タイトル画面で流れます。
ビジュアルアーツの美少女ゲームブランド・Keyによる完全新作として登場した本作。祖母の遺品整理のために鳥白島にやってきた主人公・鷹原羽依里は、島で出会った少女たちと、忘れられない一夏の思い出を紡いでいぐことになる。瀬戸内海に位置する小さな島を舞台とした儚くも美しいシナリオが特徴で、ヒロイン4人との個別エンディングに加え、本編終了後にもさらに物語の核心に迫る隠しルートが用意されている。島で過ごす夏休みの楽しさと切なさをそつなく描いた仕上がりとなっている。後にスマホやスイッチに移植された。
本作の音楽を担当するのは折戸伸治氏、竹下智博氏、どんまる氏、麻枝准氏、水月陵氏の五名。編曲のみの参加でbermei.inazawa氏、しょうゆ氏、塚越雄一朗氏、中山真斗氏、柳川和樹氏も携わっている。このうち折戸氏、竹下氏（すでに退社済み）、どんまる氏、麻枝氏はビジュアルアーツ所属の作曲家で、特に麻枝氏は本作の原案も担当している。また、麻枝氏は開発中に一時入院していた経緯からか、担当曲数は他の作曲家と比べてややすくなめとなっている。本作では、ノスタルジーと夏休みをコンセプトにした叙情的なサウンドを中心に、連綿と受け継がれてきた泣きゲーサウンドのエッセンスが凝縮された楽曲が揃っている。サウンドトラックはオリジナルのもののほか、ボーカルリミックスやオーケストラアレンジなどを収録したものも発売されている。
ゲームタイトルをそのまま冠したものとして、タイトル画面で流れるのがこの曲である。タイトル画面では突き抜ける青空を背景に、初めこそ4人の少女たちが草原にたむろしている様子が描かれるが、エンディングを迎えるたびにイラストが変化する。そうした象徴的な意味合いに呼応するかのごとく、この曲はたっぷりの余韻を持たせながらピアノ独奏による流麗な調べを奏でていく。その旋律は、穏やかで前向きで、しっとりとした優しさにあふれているが、その実、どこか漠とした寂寥感をも漂わせていて、ぽろぽろと零れ落ちるような高音の音色が、自然と耳に馴染むような郷愁と哀愁を誘う。物語の開幕と終幕を飾るにふさわしい、情緒的な魅力に満ちた一曲である。
タイトル画面とピアノは相性が抜群ですよね。オーケストラアルバムには穴沢弘慶さんが編曲したものが収録されていて、開始2分ほどは原曲同様にピアノ独奏ですが、聴き進めていくうちに大きく盛り上がっていくのが印象的です。あわせてどうぞ。
