VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#780 『GREED』(安藤童太/サイバードール/SS)

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アイマックスがおくるサイバーパンクRPG・サイバードールより、

安藤童太作曲、『GREED』。グリード戦で流れます。

セガサターン用のハードボイルドなRPGとして登場した本作。筋肉が萎縮する奇病への対抗策として、身体をサイボーグ化させる人間機械化計画が進んだ世界を舞台に、突如来訪した謎の機械生命体・DVに対抗すべく、全身サイボーグの主人公は対DV用特殊部隊・DEBUGGERの一員として戦うことになる。全編を通して貫かれる陰鬱で閉塞的な作風が特徴で、復讐と裏切りと薬物逃避とが入り混じる濃厚なSFの世界観が、いかにもなサイバーパンク臭を放っている。戦闘システムはサイドビュー型のコマンド式で、頭部・胴体・右腕・左腕・脚部それぞれにHPが設定され、各部位(倒すだけなら頭か体)を破壊して敵を殲滅、パーツを奪って自ら装着することでキャラを強化していく。万人受けとは程遠いが、独特な奥深さを持つ意欲作である。

本作の音楽を担当するのは安藤童太氏と石井吉幸氏。いずれも当時アイマックスに所属していた作曲家で、このうち石井氏は作曲のみならず効果音の制作も手がけている。本作では荒廃した近未来を表現するにあたって、非常に重苦しいハードロック・ヘヴィメタル系の楽曲が中心となっている。特に戦闘曲については、数が多いだけではなく一つ一つのクオリティも折り紙付きで、個性的なトラックが揃っている。サウンドトラックは本作発売後すぐに登場した。

グリードとは猟奇的な見た目をした人型の実験生体兵器だが、その戦闘で流れるのがこの曲である。囂々と鳴り響くエレキギターに、電話の呼出音を彷彿させる電子音が重なることで、極めて暴力的かつ徹底して無機質な雰囲気を醸し出している。1分手前から一時的に神秘的なフレーズが挿入されることで、エキセントリックな曲調に束の間だけ穏やかな休息を与えるが、その後は再び冷徹な響きへと逆戻りし、ますます物々しげな重厚感を漂わせる。グリードはただ攻撃するだけでは足りず、決められた手順通りに攻撃を加えていくことで初めて倒せるが、そうした手間をかけながらの戦闘にふさわしいシビアでグルーヴィな一曲に仕上がっている。

轟音の波に酔い痴れるのにもってこいな曲です。ストレートに格好良いのはシュトロゼック戦で、サイケデリックに格好良いのはハイド&シーク戦ですが、このグリード戦は騒がしさのなかに奇妙な落ち着きがあって、その歪んだ調和がずば抜けて格好良くて好きです。せっかくなのでシュトロゼック戦『STROSEK』(石井さんの作曲)、ハイド&シーク戦『HIDE&SEEK』(安藤さんの作曲)もあわせてお聴きください。

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