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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#829 『Poseidon's Wrath』(Gerard Marino/God of War III/PS3)

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SCE Santa Monica Studioがおくるアクションアドベンチャーゴッドオブウォーより、

Gerard Marino作曲、『Poseidon's Wrath』。ポセイドン戦で流れます。

ギリシャ神話とバイオレンスのハイブリッドが魅力のゴッドオブウォーシリーズのうち、ナンバリング3作目として登場した本作。数々の殺戮を経てオリュンポスの頂点に上り詰めた伝説のスパルタ兵・クレイトスは、さらなる暴力を求めてタイタン族を復活させるも、ゼウスの怒りに触れて冥府に落とされ、逆襲のために再び血塗られた戦いに身を投じることになる。前作、前々作と続いてきた三部作の完結編で、ハードの移行により今まで以上にリアルでエキセントリックな映像表現と、桁外れの規模を誇るステージ面積が実現した。システム面は概ね従来通りに踏襲されているが、魔法の仕様が変わり、武器ごとに固有の魔法が付属されるようになった。相変わらず暴力的なまでに完成度が高い仕上がりとなっていて、後にPS4向けにリマスター化された。

本作の音楽を担当するのはRon Fish氏、Gerard Marino氏、Mike Reagan氏、Jeff Rona氏、Cris Velasco氏。それぞれゲームや映画などの業界で活躍する作曲家で、初参加のRona氏以外、いずれもGOWシリーズには初代から携わっているおなじみのメンバーである。本作では圧倒的なスケール感に見合った大規模な編成の生演奏オーケストラで楽曲を収録していて、神々の憤怒や激情を表現すべく、特に低音を司る金管楽器に通常の倍以上の演奏者を用意しているとのことである。また、クリア後のおまけとして、ゲーム内に音楽のメイキング映像と作曲家のインタビューが搭載されている。サウンドトラックは本作単体のものに加えて、トリロジーエディションの特典としてシリーズの楽曲を網羅したものも存在する。

海の神・ポセイドンとの死闘で流れるのがこの曲である。殺意あふれる恐ろしい巨躯で三叉槍を振り回す、暴れ馬さながらの姿にふさわしい、仰々しさに満ちた音使いが印象的で、イントロからしてストリングスもブラスもクワイアも全身全霊のフルソロットルで奏でられる。荒波にもまれるような勢いで紡がれる旋律は、合奏しているというよりはもはや楽器同士で合戦をしているかのようで、特に1分20秒あたりからパーカッションが目立つようになると、いっそう暴虐的な色合いが増していく。オーケストラならではの格調高い響きと、怒りを極限まで追求した野蛮な響き、その相反する特性を両立した珠玉の一曲である。

1分43秒からのパートは、戦闘中のループでは再生されず、戦闘終了後のカットシーンで初めて流れるもので、そのカタルシス満点の音使いが、また一つ世界に混沌をもたらしたという感覚を強めてくれる気がします。

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