VGM格納庫

Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#830 『tripod』(竹間淳/ボンバーマンヒーロー ミリアン王女を救え!/N64)

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ハドソンがおくる3Dアクション・ボンバーマンより、

竹間淳作曲、ヒーローの『tripod』。ニトロス戦で流れます。

ボンバーマンシリーズのうち、爆ボンバーマンに続きニンテンドウ64向けに登場した本作。今度のボンバーマンは、ワルドス帝国に侵略され、囚われの身となったプライム星の王女・ミリアンを救うべく、王女付きの召使いロボット・ピポットとともに戦うことになる。従来の爆弾アクションに加え、ボンバーマン自身がジャンプしたり、ステージによってはパワードギアを装着して陸海空を自在に移動したりできるようになった。爆弾は基本的には時限制だが、本作からは投げた場合は地面や敵の接触判定があると即爆発するなど、起爆タイミングが見直されたほか、恒例の対戦モードも廃止され、全体的な操作感やゲーム性が変化した。今までのコミカルな路線とは異なるダウナー系の雰囲気と相まって、シリーズのなかでは異色の仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは竹間淳氏。本業はナイ(アラブの木管楽器)奏者だが、ゲーム音楽方面ではハドソン製のゲーム、特にボンバーマンシリーズに初代から携わり続けている作曲家である。爆ボンでは不参加だったが、本作では単独で作曲している。シリーズのなかでも暗めで不気味な色合いの強い本作では、楽曲もそれにあわせて本格的なドラムンベースデトロイトテクノ、ニューロファンクなど、あまり類を見ないジャンルを取り揃えている。サウンドトラックにはゲームとは無関係のボーナストラックも含まれるが、未収録曲もすくなくない。

ワルドス帝国の戦士・ニトロスは、各惑星のエリア2(惑星ごとにエリア3まで存在する)に登場する中ボスとして作中幾度も交戦することになる、いわばライバルキャラにあたる存在だが、その戦闘で流れるのがこの曲である。最初から最後まで徹頭徹尾ソリッドなビートを刻み続ける真正のドラムンベースで、ミニマルなフレーズの反復が、中毒性のある独特な陶酔感を生み出す。27秒あたりからすこし開放的な印象を与える音色が加えられるが、50秒手前で早くも次のループへと突入し、またしても淡々と同じリズムを繰り返す。何度聴くことになっても決して色褪せることのないストイックさを保ち続ける一曲である。

曲名にあるトライポッドは三脚のことで、この曲に限らず本作の楽曲の曲名はどれも不思議な英単語で構成されています。それも含めて前衛的と言えるかも。