海田明里作曲、3の『遠くへ』。青年期のワールドマップで流れます。
ブレスオブファイアシリーズのナンバリング3作目にあたる本作。かつて竜族が存在したが、凄絶な戦争の果てに滅んだとされる世界を舞台に、竜族の唯一の生き残りである少年・リュウは、ウィンディア王国の王女・ニーナとの出会いを通じて、自らの素性と竜族の謎を知るべく冒険に出ることになる。ストーリーは幼年期と青年期の二部構成で、戦闘システムはシンプルなターン制ながらも素早さに応じて追加行動ができるほか、ジーンという竜の因子を組み合わせて竜変身し、強大な力を発揮して戦闘を有利に進められる。おなじみの街づくり要素である共同体システムは健在で、新要素として各地の師匠に弟子入りすることで、成長具合に補正をかけたりスキルを習得したりできるなど、自由度の高いキャラメイクが可能である。笑いありシリアスありの魅力的なシナリオと相まって、手堅くまとまった仕上がりとなっている。後にPSPに移植された。
本作の音楽を担当するのは青木佳乃氏と海田明里氏。ともに当時カプコンに所属していた作曲家で、インストゥルメンタルの楽曲はもちろん、エンディングの主題歌についても、作曲のみならずボーカルをダブルで務めている。ブレスオブファイアシリーズは毎度のごとく作曲家が入れ替わることで知られていて、両名とも本作がシリーズ初参戦である。本作では、王道なファンタジーの世界観にあわせつつも、オーケストラに偏らずポップやロックなどの多様性のあるサウンドが揃っている。サウンドトラックは未収録曲が多いオリジナル盤、未収録だったものも含めてシリーズの楽曲を網羅したスペシャルボックス、スペシャルボックスのうち本作の楽曲のみを抽出したデジタル配信版の3種類が存在する。
青年期のワールドマップで流れるのがこの曲である。幼年期の陽気なフュージョンサウンド（同じく海田氏の作曲で『こともなし』）から一転、ジャズっぽさは受け継ぎつつ、物語の後半にふさわしいような渋い哀愁を湛えた曲調に仕上がっている。成長して遠くへ、距離的にも精神的にも真実を追い求めて旅する感覚を、そのメランコリックな旋律が小洒落たムードを醸しながら表現している。心地良くリズムを刻むスネアドラムが大人びた雰囲気に磨きをかけ、ループ直前のメロディーが途絶える箇所（1分14秒～18秒）でソロパートを担うと、次のループに向けてより深い憂いを漂わせる。時の流れがもたらす悲しみと、それでも前へ進む力強さを滲ませた一曲である。
大人になるということの、その複雑な心境の変化というか、移りゆく感情の機微のようなものが曲のなかにぎゅっと濃縮されているような印象です。落ち着くけど、切ない感じがしますね。『こともなし』もあわせてどうぞ。
