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Video-Game Music Registry:好きなゲーム音楽を隔日更新で紹介します。

#854 『夜の情景』(菊田大介・藤田淳平/CARNIVAL/PC)

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S.M.Lがおくるサイコ陵辱ノベル+ADV・カーニバルより、

菊田大介藤田淳平作曲、『夜の情景』。回想シーンなどで流れます。

アダルトゲームブランド・S.M.Lの処女作にあたる本作。嫌なことがあると記憶をなくす癖がある、いじめられっ子の主人公・学は、衝動的にいじめの主犯を殺してしまい、殺人の罪で捕まるも、護送中のパトカーから逃亡、時間の問題だと分かりつつも幼馴染の少女・理紗の家に匿ってもらうことになる。心に傷を負った少年少女の生きづらさを描いた、殺人、虐待、性暴力などの猟奇的な描写を伴う三部構成のシナリオが特徴で、章ごとに登場人物の視点が入れ替わることで、徐々に事件の全容とキャラの心理へと迫っていく。ラブコメチックなオープニングアニメとは裏腹に、精神を抉るような重苦しさがある仕上がりとなっている。

本作の音楽を担当するのは菊田大介氏と藤田淳平氏。主題歌の作曲については、オープニングは上松範康氏、エンディングはmilktub(bamboo氏と一番星☆光氏によるロックバンド)が手がけている。菊田氏、藤田氏、上松氏はいずれも音楽制作チーム・Elements Gardenに所属する作曲家である。本作では重々しい作風に沿ったしっとりとしたピアノ曲から、サスペンスっぽい緊張感のあるギターナンバー、ときには穏やかで明るい曲調のものまで、一通りバラエティ豊かな楽曲が揃っている。サウンドトラックは主題歌およびそのフルバージョンも含めて収録されているが、パッケージ版購入者のアンケートハガキに対するお礼の品か、2004年のコミケの限定販売でのみ入手可能な非売品である。

プロローグの逃亡シーンの直後に語られる学校の回想など、いくつかの重要な過去回想や、回想でなくても物語が動くようなシーンで流れるのがこの曲である。感傷的なピアノの旋律と、幻想的な響きを帯びたシンセサイザーの伴奏とが絡み合う、豊かなバラード風の音使いが印象的で、イントロが明けると、しばらくシンセが息を潜めてピアノ独奏で紡がれる。58秒からやってくるサビでは、心の琴線に触れるような煌びやかな高音が奏でられ、哀しみだけに留まらぬ複雑な感情が込み上げてくる印象を与える。その後もサビを経るごとに昂り続け、ラストスパートとなる2分37秒からのフレーズでは、静まり返るような安寧のなかで最後の盛り上がりを見せる。本作を象徴するような一曲である。

イントロの宙を漂うような浮遊感のあるシンセがすごく心地良くて、そこから先もますます心地良さに拍車がかかっていくのが好きです。